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The Mathematical Knight

Noam D. Elkiesという数学者がいる。数学、それも代数に近い分野を専攻している研究者なら、まずその名前を知っているであろうと思われるような天才数学者である。この人は実は数学だけでなく、チェスプロブレムの世界でも第一級のプロブレミストとして知られている。彼のホームページを見ると、フレッシュマンを相手に「チェスと数学」についてのセミナーを毎年行っているらしい。ちょっと学生さんがうらやましい。

そのElkiesが、これまた大数学者のRichard P. Stanley(代数的組み合わせ論の世界的権威)と共著で書いた ''The Mathematical Knight'' というサーベイがあって、暇な時間にときどき目を通しているのだが、これがなかなか面白い。プロブレムの奥深い世界を基本的なことから説明しながら、一方でチェス盤上に存在する数学的な問題、特にナイトの動きに関する問題についていろいろ紹介している。

knight's_tour.png例えば、Knight's Tourのパズルと呼ばれる問題がある。これはナイトの動きでチェス盤の全部のマス目を一回ずつ通るルートを見つけよ、というものだ。つまり一筆書きである(ここでは特に、一回りしてスタート地点に帰ってくるようなルートのみを考える)。そのようなルートが存在することはオイラーも見つけていたらしいが、では何通りあるのだろうか。また盤のサイズを変えてm×nのサイズのチェスボードを考えたとき、一筆書きのルートの数はどう変化するだろうか? ''The Mathematical Knight'' によると、普通のチェス盤の場合、13267364410532通りであることが、1997年にB.McKayによって計算されたそうである。また、mとnがともに奇数のときは、ルートが存在しないことも知られている。

掲げた図はKnight's Tourの一例。私はこの図を、子供のときに「チェス次の一手」(東公平著)で知って、いたく感心した記憶がある。というのもこの図面の数字は、ナイトの跳ぶ順番を示しているだけでなく、全体が一つの魔法陣になっているのだ。縦と横のラインごとに数字を全部足すと、すべて260になっている。もしかして、Knight's Tourなら常に魔法陣になっているのだろうかとそのときは期待したのだが、残念ながらそういうわけではないらしい。とはいえ、不思議な気分にさせてくれる図面である。

ところで、実はElkies氏の特技はこれだけではない。何とピアノが弾けるのだ!それもとんでもなくうまいらしい。私もチェスプロブレムやらピアノやらにつまみ食い程度に手を出しているが、数学も含めすべてにおいてはるかに上を行かれているわけで、こういう人がいると己の無能さにがっくり来てしまう。まあElkies氏は、詰将棋創作には手を染めていない……と信じたい。

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