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Nessun Dorma!

ルチアーノ・パヴァロッティが昨日亡くなったが、パヴァロッティといえばやはり真っ先に思い出されるのが、プッチーニのオペラ「トゥーランドット」の中で歌われるアリア「誰も寝てはならぬ」だろう。フィギュアスケートの荒川静香選手の演技でも使われて有名になった曲だ。

もう何ヶ月か前のことになるが、イギリスのタレント発掘番組 "Britain's Got Talents" でこの曲を歌い、一躍スターになったPaul Pottsという人がいる。あちこちで紹介されているのでご存じの方もいるだろう。その衝撃的なデビューの映像が見られる。南ウェールズで携帯電話のセールスの仕事をしているという彼がステージに出てきたとき、そのいまいちさえない容貌といい、安っぽいスーツといい、自信のなさそうな様子といい、どう見ても期待できそうにないなと審査員も冷ややかな顔をしている。「ポール、今日は何をするの?」「オペラを歌います」という返答に、おいおいオペラなんて勘弁してくれよという表情だ。しかしひとたび演奏が始まると、素晴らしい熱唱に会場の雰囲気は一変。審査員の顔がみるみる変わっていくのが痛快だ。大喝采の中、絶賛の講評を受けて彼は帰っていく。このあと、この番組で彼は優勝し、今ではCDデビューまでしている。この年末には女王陛下の前で歌うことが決まっているのだそうだ。

この映像は多くの人を感動させずにはおかないようである。もちろん、風采の上がらないこの男性が思いもよらない絶唱をやってのけたというそのギャップにも一因があるだろうが、基本的にはやはりこの曲自身の魅力に依るところが大きいのではないかという気がする。オペラにはいい曲がたくさんあるが、中でもこの「誰も寝てはならぬ」や「魔笛」の「パ・パ・パ…」などは、ちょっと聴いているだけでグッと来てしまう力を持っている。今回の映像でも、元々さして長くないアリアをさらに切り詰めて1分半程度にしているのに、会場の雰囲気は冷笑から熱狂へと完全に変わってしまった。歌の力とは誠に大したものである。

この男性に関する記事はnews.com.auに出ている。また、日本語での記事もあった。

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コメント

この番組はリアルタイムで見ていました(残念ながら彼のデビュー戦は見逃しましたが、決勝のときは家族みんなでテレビにかじりついていました)。アクロバットなものからコミカルなものまで色々なパフォーマンスで勝負する人たちがいる中で、見事栄冠を勝ち取ったのですから凄いことです。たしかにさえない容貌なのですが、むしろだからこそ歌の見事さとのギャップが際立って、応援したくなるキャラクターでした。

その、さえないサラリーマンでいて素晴らしい歌唱力をお持ちのPaul Pottsさんの話題は、‘あの彼’とあまりにも重なります。
ギャップがあるっていうのは話題性抜群ですね。(「あの彼」では分かりにくいですが。)
話題性っていつまで続くんだろうと、ふと思いました。

パヴァロッティ氏のご冥福をお祈りいたします。生の歌声に触れてみたかったです。

はてるまさんはきっと生でご覧になっていただろうなと思っておりました。
あの審査員たち、特にSimon Cowellはいつもきつい批評ばかりするんだそうですね。
そんな人に "absolutely fantastic" と言わせているのがまた痛快でした。

準決勝以降の映像では彼もいい格好をしているので、
デビューしたときのあのギャップはもうあまり感じられません。
そうなると今後はだんだん実力だけが評価の対象になるわけで、これからが大変ですね。
いくらうまいといっても、よく聴けばやっぱりパヴァロッティの方がいいなと思ってしまいますし。
逆に言うと、以前
http://monsieur.ddo.jp/blog/archives/2007/02/hatto_hoax.html
でもふれましたが、普段音だけを聴いているつもりでも、実はそれ以外の要素に
かなり影響を受けてしまっているということでしょうね。

これはすごいね。やっぱりデビューのがいいよ。何度見てもぞくぞくっとするね。彼の表情を見ていると歌っているときになにかが乗り移って、歌い終わって抜けっていった感じ。カメラワークもうまい気がする。歌い始めた途端、審査員も含め会場が一体になる様子がうまく伝わってきましたよ。
いいもの見さしてもらいました。
どうもありがとう。
(それにしてもなにか、僕の文章だけ幼稚な感じがするな。)

私も最初見たときはぞくぞくしたので、こういうコメントを待っておりました。
歌っているときは何かすごくかっこよく思えるんですが、歌い終わった瞬間、
またさえない携帯電話セールスマンに戻っちゃっているんですよね。
テレビ局側は事前のオーディションなどでインパクトを与えると分かっていたので、
カメラワークも十分盛り上がるように計算してあったのではないかと思います。

もし彼が代わりに安っぽい歌謡曲か何か歌っていたら、どれほど歌がうまかろうと
あんなことにはならなかったはずで、それを考えると、
あの「誰も寝てはならぬ」を選んだことこそが彼の勝因ではなかったかという気がしますね。

Paul PottsがBritain's Got Talentに初登場したときの様子のビデオを、英語の面から解説した記事を書きました。トランスクリプトつきです。よろしければご覧下さい。

イギリス人の歯並びと鳥肌

反応が遅れてしまい、申し訳ありません。
ブログのシステムが勝手に迷惑コメントに分類してしまっており、全然気づいていませんでした。

解説記事は読ませていただきました。ありがとうございました。

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