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ポアンカレ予想の番組

3日ほど前だが、テレビで「数学者はキノコ狩りの夢を見る」という2時間弱のドキュメンタリー番組が放送されていた。数学だけを題材に、ここまで長い時間の番組が制作されるのはあまりないことだろう。放送当日はネットワーク切断のトラブルがあったりしてその対応に追われていたが、一応録画をしておいたので今日までにゆっくり見ることができた。内容は、ポアンカレ予想の歴史とそれを解決したPerelmanの物語。数学においてトポロジーという分野は現実社会に存在する事物で例え話がしやすく、数学の外の世界にいる人間に比較的紹介しやすい領域と言えるだろう。しかし、そうはいってもポアンカレ予想やサーストンの幾何化予想とは何かを説明するのは簡単ではないが、この番組はかなり頑張っていたのではないかと思う。フィールズ賞も100万ドルも受け取らずに隠遁したペレリマンについても、変わり者扱いする興味本位の紹介ではなく、彼が証明にすべてをかけ、その代償として社交性を喪失してしまうほどの仕事をしたのだということがよく伝わってきてなかなかよかった。

ペレリマンほど極端でないにしても、一般に数学者はかなり変わり者だと思われがちだ。実際変わった人もいるのは確かだが、周りからそう思われるのは、数学者が物事の本質に注目しようとするあまり、その周辺にある付帯的な事柄をあまりにそぎ落としすぎるからなのかもしれない(付帯的といっても、あくまで数学者がそう考えるものということである)。例えば数日前に書いた数学の講演についても、未だに古くさい(と外からは思われている)スタイルが多いのは、内容さえ伝わるのなら、それをどう表現するかということなど瑣末なことだ、という意識もあるのではないかと思う。聴いている方も数学者だから、それで全く問題はないわけだ。しかし、それでは外の世界からは理解されない。結果、変わっているということになるのである。

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コメント

 今NHKハイビジョンの放送で見ました。ポアンカレに関しては聞いたことがありましが、ペレリマンは初めて知りました。番組では、それ以外にもこの問題に一生を捧げた数学者の話が良かったです。物理学とクロスオーバーしているのも興味深いですね。

すみません、せっかくコメントしていただいたのに
なぜか迷惑コメント扱いになっておりました。
反応ができなくて大変失礼いたしました。

10月22日のNHKテレビ番組で、このポアンカレ予想の問題を見ました。私なりに考えてみました。ご意見をお寄せ下さい。
問題は、『地球からロケットに乗り、そのロケットに長い長いロープを付けて、宇宙のありとあらゆる所を旅行します。そして、旅行が終わり地球に辿り着いた時、手元にはロープの始まりと終わりの両端があります。そのロープの両端を持ったまま離さないで、ロープ全体を手元に引き寄せます。そして、ロープが全て手元に引き寄せられた時、この宇宙はおおむね丸いと言えるか。』という問題でした。宇宙が仮にドーナツ形であれば、ロープは穴に引っかかって引き寄せられません。
トポロジーでは、小さい差異には拘りません。形は自由に伸ばしたり縮めたり出来ます。その様に加工して同じ形になれば、同じ形と考えます。球体・円錐・三角錐・円柱・立方体も全て同じ形と考えます。この問題では、伸ばしたり縮めたりして球体になる形を『おおむね丸い形』と定義します。球体をいくら伸ばしたり縮めたりしても、穴が無いのでドーナツ形にはなりません。トポロジーでは球体とドーナツ形は異なる形と考えます。この問題は、球体以外の形で、内部にロープをありとあらゆるコースを辿って張り巡らせて、その両端を離さずに引っ張って全てを回収できる形があるかということを言っています。
物には色々な形が有ります。ドーナツ形も在れば、穴の2つ3つのドーナツ形や、ドーナツの途中に1つの結び目のある形、または2つ3つの結び目のある形と、さまざまな形があります。それらの形はいくら伸ばしたり縮めたりしても、球体にはならないので、『おおむね丸い形』ではないと言えます。そうして見ると、物の形のパターンは無限とも思えます。
そこで、ここでは、ロケットに付けたロープを長い円柱形と考えてみましょう。ドーナツ形は、ロープ(=円柱形)の両端をくっ付けた形です。ドーナッツの途中に1つの結び目のある形は、ロープで1つの結び目を作り、両端をくっ付けた形です。この様に円柱形のロープをいろんな風にぐるぐると絡ませた上で、その両端をくっ付けることで、異なる形を作ることが出来ます。(ロープの途中をくっ付けることは、トポロジーでは両端をくっ付けること同じです。くっ付けたところから先を、縮めて無くしてしまえばいいのです。複数個所をくっ付けて穴を複数にすることは、穴1つの形の部分数個から成ると考えることが出来ます。)
そのロープの絡ませ方で異なる形になり、その絡ませ方は無限です。しかし、ロープの両端をくっ付けない限り、そのロープは複雑に曲がりくねってはいますが円柱形であり、伸ばしたり縮めたりすれば、結局球体になります。ロープの両端をくっ付けて初めて、球体とは別の形になるのです。
今度はそのロープを、宇宙に見立てて見ましょう。円柱のロープの中心に、一本の赤い紐があるとします。(その赤い紐は、ロケットに取り付けたロープです。)円柱のロープの両端をくっ付けてしまうと、途中でどの様にぐるぐるとロープを絡ませても、中心にある赤い紐の両端を離さずには、赤い紐全てを引き寄せることは出来ません。ロープの両端をくっ付けない時のみ(=球体である時のみ)、赤い紐の両端を離さずに引っ張って、赤い紐全てを手元に引き寄せられます。従って、赤い紐を全て手繰り寄せられた時は、ロープの両端はくっ付けられておらず、ロープは複雑に入り組んだ円柱形であり、球体に還元出来、『おおむね丸い形』であると言えます。即ち宇宙は、『おおむね丸い』と言えます。宇宙を構成する部分に、『おおむね丸い形』以外の形(例えばドーナツ形)が1つでも含まれていれば、ロープは引き寄せられません。
この問題では、ロケットに取り付けたロープそのものが、宇宙の形を表現しているのです。いろんな形を作るには、無限にあるコースの1つをロープ(=円柱形)が辿り、両端をくっ付けることによって初めて、球体とは異なる形になり、辿るコースの違いによってそれぞれ異なる形になると、ポアンカレは言っているのです。
問題の中に答えが隠されているのです。ポアンカレが色々な形を頭の中で作ろうとして、丸い形(=球体)を色々引き伸ばしたり縮めたりしてみたが、一部をくっ付けない限り、元の丸い形に還元されてしまう。それがまさに、この問題におけるロープのイメージに、辿り着いたのではないでしょうか。
ちなみにロープ(=円柱形)の両端をくっつけるには両端の外面と外面、内面と内面を普通にくっ付ける方法と、両端の外面と内面、内面と外面をくっ付ける方法の2通りがあります。前者は一本のホースの切り口両面を向かい合わせにしてつなげる方法で、そうするとホースの中心に通した赤い紐を手繰り寄せられないことは単純に分かります。後者はホースの切り口の片方を裏返しにして後方に剥き、内側が外側になった状態の切り口に、もう片方のホースの切り口をつなげる方法です。ホースの側面が交差します。その時ホースは内側と外側が連続した輪になりますが、ホースの中心を通した赤い紐の両端を、ホースの外の空間で持つことになるだけで、同様に手繰り寄せられないことが分かります。くっ付け方には影響されないのです。

当ブログ史上、最長のコメントをありがとうございます(笑)。

ポアンカレ自身もその後証明に尽力した数学者たちも、感覚的にはご指摘の議論と
だいたい似たようなことを考えて、この予想が正しいということを確信していたのだろうと思います。
ただ、それを数学的に証明するということはまた別の作業ですから、
直感的にはどう考えても正しいと思われることなのになぜか証明できない、
その不思議なギャップにみんな苦しんだのでしょう。

なお、番組の中で言っていたロープの例えは、基本群と呼ばれる概念を
身近にある事物を使って分かりやすく表現しようとしたものです。基本群については、例えば
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%83%A2%E3%83%88%E3%83%94%E3%83%BC
などに簡単な説明があります。ロープの例えは分かりやすくていいのですが、
あまりその例えで考察していると具体的なロープのイメージに引っ張られすぎて、
ポアンカレ予想が実際に考えている内容からずれてきてしまう可能性があります。
連続写像とは何か、同相とは何か、ホモトピーとは何かといったいくつかの数学的概念を理解したうえで、
それらの言葉を通してポアンカレ予想を改めて眺めてみると、より深いレベルで理解できるかもしれません。

ポアンカレ予想とは『地球からロープを付けロケットに乗り、宇宙を旅行する。そして、地球に帰った時、ロープの両端がある。そのロープの両端を離さないで、ロープ全体を引き寄せられた時、この宇宙はおおむね丸いと言えるか。』という問題です。これは3次元閉多面体(3次元の縁の無い繋がった一枚の面)の中で、球体(3次元球面)以外にロープの引っ掛らない(単連結)の形があるかと言うことです。3次元閉多面体の作り方が有限ならば3次元閉多面体の数も有限であり、1つ1つ検証すれば、回答が出ます。ヒントは、3次元閉多面体を平面で輪切りにした時、必ず一本の輪になっており、その平面を幾ら動かしてもその輪は連続しており、必ず元の輪の位置に戻ると言う事です(ドーナツ形を考えて下さい)。輪の途中が切れていたり、元の位置の輪に戻らず途中で消えていたら、穴が開いている(=端がある)ことになります。小さくなり点になって消えること(鉛筆のキャップの形)はありますが、トポロジーではその部分は、縮めて無くすることが出来る為、その場合は無視して良いのです。二つの輪に枝分かれすることはあります。しかし、その輪は枝分かれした元の位置に必ず戻ります。(2つ穴のあるドーナツ形を考えてください)従って、枝分かれした場合、2つの基本的な形の組合せで出来ていると考えます。従って、3次元閉多面体の基本形は、一つの輪を移動させ始めの位置に戻すことで作れます。輪の形と動かし方の違いで、異なる形が出来ます。輪には3つの形があります。○(丸形)・∞(無限大形)・◎(一筆書二重丸・文字が無い為便宜上◎を使用する=一筆書きで二重丸を書いた形)です。この3種の輪は平面上で幾ら動かしても、他の輪にはなりません。∞は○にしようとしても、折り返せない点が外側に残ります。◎を○にしようとしても、折り返せない点が内側に残ります。従って、輪を移動させる途中で他の輪になることはありません。では∞にもう一捻りを加え三つの丸い部分のある形はどうでしょうか。これは、平面上で○になります。丸い部分が偶数なら∞になり、奇数なら○になります。一筆書き三重丸は平面上で○になります。この場合、丸が偶数なら◎に、奇数なら○になります。従って、輪の種類は3種類しかありません。基本的な動かし方は4種類あります。①輪が左右対称になる様な軸を取り、その軸を中心に回転させ元の輪の位置に戻す方法、(○の場合球体になります。∞の場合回転軸は2本取れますが、いずれも一点に於いて面が交わる為、存在しません。◎の場合回転軸は一本取れますが、これも面が一点に於いて交わる為存在しません。)②輪を外の点を中心として、一回転させ元の位置に戻す方法、(○の場合、ホースの口と口を向かい合わせに繋いだドーナツ形になります。◎の場合は、縦切り口が◎のドーナツ形[=幾ら伸縮し面と面をすり抜けさせて変形しても、ドーナツの内側に折り返せない輪がドーナツの穴を取り囲むように横{ドーナツを横たえた場合}に残ります])∞の場合は、縦切り口が∞のドーナツ型[=変形しても、ドーナツの外側に折り返せない輪が横に残ります])③輪を輪の外の点を中心として、半回転させ、途中で引き返し、来た軌道とは異なる軌道を通って元の輪の位置に戻る方法、(○の場合、ホースの口と口を同じ方向に向けて合わせた形=クラインの壷になります)④輪を上下方向に移動させつつ元の輪を取り囲むように大きくした上で元の位置に戻す方法、(○の場合ドーナツ形で②の方法と同じ形になります。)
トポロジーでは、面は幽霊の様にお互いにすり抜ける為、途中複雑に結び目が出来る様に動かしても、すり抜けて結び目は出来ず、この4種類の方法で作った形に還元されます。②で2回転させて元の位置に戻しても、面と面がすり抜ける為、ドーナツ形になります。③の途中で引き返すことを2度行った場合は、変形すると単なるドーナッツ形になります。輪が元の位置に戻る動かし方は、この基本的にはこの4種類のみです。ただし、途中の動かし方の変化が②③④には3種類あります。②について言えば、前記方法と、回転の途中で引き返し、来た輪を取り巻く様に大きくし、また元の進行方向に引き返しながら輪を小さくして元の位置に戻す方法(ホースを内側が外側になる様に外側にひっくり返えして剥き、また外側が内側になる様に内側にひっくり返した上で切り口をつなげた形=変形させても、ドーナツの外側に縦方向[ドーナツを横たえた時]に折り返せない輪が残ります)、逆に途中で引き返しながら輪を来た輪の内側に入り込む様に小さくし、また元の進行方向に引き返しながら輪を大きくして元の位置に戻す方法(ホースを外面が内側になる様に内側にひっくり返した上で、今度は内面が外側になる様に外側にひっくり返し切り口をつなげた形=幾ら変形してもドーナツの内側に縦方向の折り返せない輪が残ります)の3種類です。2回この操作を行うと変形すると唯のドーナツに戻ります。③について言えば、移動の途中に②の場合と同じ動きを入れる方法です。変形しても折り返せない縦の輪(ホースの切り口と同じ形の輪)がクラインの壷に残ります。この場合、内面と外面が繋がっている為、外側の輪を移動させれば内側の輪となる為同じ形と言えます④について言えば、単純にぐるりと一回動かす方法(○②と同じ形)と、輪を2回転させて元の位置に戻す方法(ドーナツの縦断面は一筆書二重丸=◎②と同じ形)と輪を∞の様に動かす方法(ドーナツの縦断面は∞=∞②と同じ形)の3通りありますが②と同じ形になります。3回転させた場合、変形すると唯のドーナツになります。∞の○が3つになる様に動かしても、変形すると唯のドーナツ形になります。以上述べた、Ⅰ球体・Ⅱドーナツ形・Ⅲ内側に折り返せない横の輪のあるドーナツ形・Ⅳ外側に折り返せない横の輪のあるドーナツ形・Ⅴ内側に折り返せない縦の輪のあるドーナツ形・Ⅵ外側に折り返せない縦の輪のあるドーナツ形・Ⅶクラインの壷・Ⅷ折り返せない縦の輪のあるクラインの壷の8種類の基本形が存在します。この8種類の形は幾ら伸縮し、面と面をすり抜けさせても他の形にはなりません。上記以外の輪と動かし方の組合せでは、3次元閉多面体にならないことが分かります。つまり、物の形はこの8種類の組合せで作られていることが分かりました。Ⅱ.Ⅴ.Ⅵではドーナツの穴が引っ掛りロープは回収出来ません。Ⅲ.Ⅳ.Ⅶ.Ⅷでは面の内側と外側が繋がっており、ロープの輪の中に縁の無い面(どこまでも続く面)が存在する為、ロープは回収出来ません。ロープを回収できる形はⅠの球体のみです。従って、宇宙を構成している部分に、球体以外の形が一つでも含まれている場合はロープを回収することは出来ません。従ってロープが回収出来た時この宇宙は『おおむね丸い』と言えます。

昨夜のこと、野球が韓国に負けて、嫁と文句言い合いながら、チャンネルを変えていたら、たぶん、これの再放送をやってました。(最後に高校時の先生が隠遁アパートを訪問するやつです)
このブログで拝見してから長く気になっていたのです。ペレリマンの人生もさることながら、証明の完成にいたるまでの、いろんな数学者の卓抜な着想の面白さにも感激して、見終わって夫婦ともども、「野球に負けるなんて小さなことだね」。
私もチェスの局面を理解しようとして、いろいろ理屈と手順のシンプルな組み合わせを模索しますが、その時の熱中は、数学者の情熱の何分の一かを共有してるんでしょうね。
どうしてものめりこんでしまいます。動物的な事情なのか、人間的な理由があるのか、よくわかりません。

今になって再放送をしていたんですね。
テレビ番組という不特定多数を相手にするプレゼンテーションで数学を扱うのは難しく、
たいてい適当にタレントを呼んできてよく分からないたとえ話に終始したりして終わってしまいますが、
あの番組はたっぷり時間を取って結構うまくやっているなと思いました。

数学、ボードゲーム(チェスまたは将棋)、音楽の3つは何か共通するものが確かにあるという気がします。
それが何なのかは結局のところ自分でやっていてもよく分からないのですけど、
通奏低音のようなものの存在を感じるんですよね。きっと脳の近い部分を使っているんだろうとは思います。
その脳の部分を使う楽しみを知っているというのは幸せなことだとつくづく感じますね。

詩はどうだろう、とか、
幸せなのか、不幸なのか、とか、
「数学」は「それだけ」で出来てるんだろうか、とか、
考え出すとキリが無い問題ですね。

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