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ベーゼンドルファー

先月の末だったが、オーストリアのピアノメーカー、ベーゼンドルファーをヤマハが買収する方向に話がまとまったというニュースが流れていた。スタインウェイやベヒシュタインと並び称される名門も、近年は経営が苦しかったらしく、売りに出されていたという。外資に買われたとなるとウィーンの人の反感を買いそうなのがちょっと心配ではあるが、ヤマハもさすがにベーゼンドルファーのブランドは大事にするだろう。

ピアノを弾く人にはよく知られているが、ベーゼンドルファーのグランドピアノは他にはない特徴がある。普通のピアノの鍵盤は88鍵で、Aの音が最低音だ。しかしベーゼンドルファーのフルコンにはさらにその下に4つ鍵盤があり、一番下の音はFなのである。演奏中、瞬間的に視線をやったときに誤解しないよう、つけ加わっている4つの鍵盤はすべて黒く塗りつぶされている。この鍵盤を弾くことを要求するような曲はまずないが、重低音をガーンと響き渡らせることに快感を覚えるピアノマニアにとって、このプラスされた4鍵はいたく魅力を感じるものなのである。そんなわけで、学生時代のピアノサークルでは、出演予定の演奏会の会場に置いてあるピアノがベーゼンだと聞かされると、スタインウェイと知らされたときとはまた別のワクワク感を感じている人が少なからずいたように思う。

Chaconne.jpgベーゼンの「禁断の黒鍵」を使いたくなる曲の筆頭は、おそらくバッハ=ブゾーニの「シャコンヌ」だろう。言わずと知れた名曲を壮麗な演奏効果を持った編曲で楽しめるので、ピアノサークルでは常に人気曲であった。この曲の一番最後、重低音を響かせながら音が一音ずつ落ちていくところで、最後の一塊だけは1オクターブ上で弾くように指示されている(赤枠内)。曲の流れからいって、ここはGの低音が存在しないためにやむを得ずブゾーニが上に上げたと想像できる。しかしベーゼンのフルコンならば、この箇所で妥協する必要はない。落ちるところまで落ちればよいのだ。かつてベーゼンドルファーのピアノで演奏会をしたとき、シャコンヌを弾いた友人が満足げに黒いG音を叩いていたのをよく覚えている。

買収後にベーゼンドルファーがどういうことになるかまだ分からないが、低音の黒鍵は残して置いてもらいたいものである。

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コメント

ベーゼンが売られるとは初耳でした。スタインウェイ全盛の今ではさしもの名門も経営が難しいんですかね・・・。
シャコンヌの最後は納得です。そこはぜひ下のGで弾きたい(笑)。
バルトークの2番のコンチェルトの1楽章の最後のスケールは下のGを要求していますよね。あれはインペリアルでないと弾けません。

コメントありがとうございます。
そうか、バルトークにインペリアル御用達音がありましたか。
まああのあたりの音だと、Gの代わりにAを弾いてもあまり変わらないかもしれませんけどね(笑)。

ベーゼンが売られるのでは?という情報は11月の半ばごろ噂ではきいていましたが、やはりびっくりしました。

たまたま今年の9月インペリアルを初めて弾く機会がありました。「このAより低い音はどんな時に使うのですか」とヴァイオリンの人に尋ねられたので、「ブゾーニが編曲したシャコンヌのここで弾くんです」と言ってその最後を弾いてみせました。今度弾けるのはいつになるやら。

尋ねられてその場で「ここです」とあれを弾けるとは素晴らしい。ピアノの会OBの鏡ですね(笑)。

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