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The real secrets of magic

最近、David Stonesというフランスの若手マジシャンのDVDをよく見ている。世間一般にはあまり知られていないが、マジック関係のDVDというのは実はかなりたくさん出ていて、ちょっとかじってみようと思う側にとってはずいぶんと便利な世の中になった。ちょっと前までは、いろいろな技法を活字による説明で理解するしかなかったわけだが、これが結構難しいタスクだったのである。「客の注意が向こうに向いた瞬間、右手でカードを取る。このタイミングは早すぎても遅すぎてもいけない」などと書かれても、いったいどういうタイミングなのか理解するのは容易ではない。こういう言葉では説明しにくいことでも、映像なら一目瞭然である。

そもそも、マジック関係への投資というのは半ばギャンブルに近いものがある。「こんな不思議な現象が、面倒な練習なしで誰にでもできます!」などという文句につられて買ってしまい、期待していたら到底使えないようなものだったなどということはしょっちゅうだ。DVDもその例外ではなく、買ってみてがっかりということは少なくない。数学者の講演と同じでマジシャンも説明があまりお上手でない人がおり、これに分かりにくいカメラワークが加わったりするともう本当に理解するのに苦労する。しかしこのDavid Stonesの "The real secrets of magic" は非常に満足すべき出来だった(リンク先はDVDで使われたシーンを利用して作られた短編映像)。単なるマジックの実演・解説だけではなく、むしろマジックをする人間のあるべき振る舞いや失敗例、困った客への対応などが丁寧に説明されており、かゆいところに手が届く構成である。ときおり挟まれるギャグがかなりブラックでやや悪趣味に過ぎるきらいはあるが、カメラワークも秀逸だ。

見ていて改めて思うのは、マジックにおいてタネというものの占める割合というものはほんの一部に過ぎないということだ(本人もノルウェーの番組に出たときに同じようなことを言っていた)。とかく日本では、マジックというとすぐトリックを見破れるかどうかという話になってしまい、タネが分かればマジシャンとの対決に「勝った」と思う人が多いような気がする。だが本来、マジックは勝負をしているわけではないのだ。David Stonesの巧みなカードさばきと話術を見ていると、もうタネなんかどうだっていいじゃないかという気になってくる。裏で何をやっているかなどということにあまり固執せず、心地よくだまされることを楽しむ。おそらくそれがマジックの正しい楽しみ方であり、また客をそうさせることができるのがプロのマジシャンなのであろう。

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コメント

私はセロが特に好きです。やはりトリックを見破れるかどうか、というレベルでテレビをじ~っと見ている人種。そしてタネが分かればマジシャンとの対決に「勝った」と思うタイプです。ナッツーさんの話から、そっか~!マジックは勝負をしているわけではないのか、と気がつきました。(もちろんセロのタネは全く分かりませんでしたよ)。
トリックといえば、今年は絵画に関する演奏をします。その中で「騙し絵」というジャンルを選び、連弾でピアノを弾きます。私もそのステージで、お客さんにトリック音楽のしかけを探されるより、エレガントな演奏を純粋に観て欲しいと思います。それと同じでしょうねえ、きっと。

セロは人気ありますねえ。セロの場合はテレビ局の都合もあって、
マジシャン側が「勝負」する演出にしている面もあるような気がします。
この間の連休に友人夫婦が遊びに来たとき、
彼らがセロの番組を録画したDVDを持ってきて、一緒に見ました。
あの怪しい日本語が得体の知れなさを増大させることにうまく貢献しているような気がしますね。

騙し絵をテーマに連弾とは面白いですね。
いつも演奏会のコンセプトやテーマを工夫していらっしゃるなあと思います。

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