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2008年04月30日

詰パラ5月号と初入選作

実は昨日詰備会に行く前に、すでに詰パラの5月号が届いていた。連休に入る前に届けきろうということか、今号はとりわけ発送が早かったようで、詰備会にいらしていた方々もみんなオレンジ色の表紙の詰パラを持っていたようだ。そこで「斎藤さんの、出ていたね」と言われ、何のことかと思ったら「名局ライブラリー」に昔の半期賞受賞作が紹介されていたのだった。まだじっくり目を通しておらず、気づいていなかったのである。

あの作品はまだ右も左も分からないころに手探りで創作したものだったが、詰パラの初入選作となっただけでなくあのような高い評価をいただくことができ、自分の中では看寿賞受賞作と並んで大事な作品となっている。何より、あれのおかげで自分が看寿賞作品1作だけの「一発屋」と認識されるのを避けることができたような気がするのだ(もっとも、「二発屋」と思われている可能性は十分にある)。名局ライブラリーの記事に「平均点が2.83で解答者の評価は厳しい」とあったが、実は投稿前につてを頼って某詰将棋作家に見てもらったときは、「採用されたら、評価の平均点は2.4くらいだろう」という感想をいただいていた。だから2.83という数字は、私にとっては十分すぎるほど高い数字だったのである。2003年の年が明けて間もない1月3日、八重洲ブックセンターの地下で詰パラ1月号を手にとり、自作が掲載されているのを確認した瞬間のあの全身がにやりとするような感覚を、私は今でも昨日のことのように思い出すことができる。

2008年04月29日

詰備会参加

岡山で行われた詰備会に参加してきた。改装されてすっかりきれいになった岡山駅でお昼をすませたあと、ぶらぶらと桃太郎大通りを城下まで歩く。会場の天神山文化プラザにはすでに7、8名の人が到着されていた。さらに自分の後にも何人かいらしたから、最終的には二桁人数が集まったように思う。2月の詰四会のときは5名だけでちょっとさびしかったが、やっぱりこれくらい集まってくれると来たかいがあるというものだ。場はやはり、最近大流行している推理将棋やプルーフゲームが中心。おかしいのは、解いている人たちがみんな駒を実戦初形の配置に並べた将棋盤を前にして考え込んでいることだ。傍目には、普通の対局で初手から長考している場面にも見えてしまう。全国のあちこちで開かれている他の詰将棋の会合でも、最近はきっと同じような光景が展開されているに違いない。

5時に終了後、駅前の居酒屋で2次会。久しぶりに詰将棋仲間とあれこれお話しでき、なかなか楽しいひとときだった。こういう場に来ると、少しは詰将棋も創らないといけないなという気になってくる。このところ創作からは遠ざかっているが、凡作でもいいから少し考えてみようか。

2008年04月28日

Leonid Kubbel's Endgame Study No.43

2008年04月27日

三たびチェスを指しピアノを弾く

先週に引き続き、同じパターンでIさんと本屋で3時に落ち合い、隣の喫茶店でチェスを指す。Iさんにまた対局してくださいと請われたからだが、実は今度の土曜日から蒲田で行われるゴールデンオープンに参加申し込みをしてしまったため、少しは実戦感覚を思い出しておきたいというこちらの事情もあった。3局指したのだが、1局目は十数手で決定的な駒得をして投了に追い込み、2局目に至ってはf7への攻撃が通ってしまって10手でメイト。今日は調子がよさそうだとそのときは思った。しかし3局目、どうやっても悪くなさそうだなと何気なく指した手が、実は大悪手であると直後に気づく。幸い相手には気づかれなかったので事なきを得たが、もしとがめられていたらR1個を丸損するところだった。あんなことを公式戦でやったら、間違いなくRを取られてその場で試合終了である。ブランダーは、忘れたころにやってくる。

終了後、また本通商店街の端っこにある楽器店のピアノスタジオに行って1時間ほどピアノを練習してくる。このところすっかりハマってしまっているフーガは、少しずつだが譜読みが進んできた。意欲があるうちに最後までたどり着きたいものだ。

2008年04月26日

タランチュラを……折れず

OrigamiTarantulaFailed.jpg今朝は日が高くなるまでゆっくり寝ていた。お昼をすませてからはピアノを練習したりチェスを並べたりして過ごす。いつの間にか髪が伸びてきていたので床屋にも行ってきた。夕方からは市街地へ出て買い物。

先週折り始めたタランチュラ、延々と続いた沈め折りの森を抜けてようやく視界が開けたと思ったところで、突如壁にぶち当たってしまった。どう考えても折図の通りにならず、書いてあるように折れないのだ。うーん、おかしい……慎重に折っていたつもりだったが、沈め折りのどこかの工程で折り間違えたのだろうか。やっと8本の足を折り出してタランチュラの輪郭が見え始めた矢先だっただけに残念。今さら折りを戻すのは不可能なので、もし間違えたのならまた最初から折り直すしかないだろう。やはりLangの昆虫系作品は一筋縄ではいかない。もっとも、一度各ステップを経験したのは無駄ではなかったと思う。また時間を作って捲土重来を期すべし。

2008年04月25日

セミナーと懇親会に出席

今日は午前中に卒研セミナー、午後からH大に移動して代数学セミナーを聴講、そしてその後の懇親会・新人歓迎会に出席というメニュー。実際にはこれに所属講座ネットワーク不調への対応という仕事も加わったため、ちょっとタイトなスケジュールで行動することになってしまった。H大の代数学セミナーへの参加は久しぶり。今年度からH大に赴任したS先生の講演を聞いた後、夕方から大学の近くにある居酒屋に移動する。自分は車で来ていたからもちろんアルコールはなしだが、相当飲んで呂律が回らなくなったり寝込んでしまったりするような人もいた。9時半頃に終わり、夜の山陽自動車道を疾走して帰途に就く。ああ、明日はゆっくり寝ていられるのがうれしい。

2008年04月24日

数学演習

今日も昨日に続いて帰りが遅くなった。1年生の数学演習を見ていたためだ。正規のコマは昨日なので、正確にはその続き、ということになる。1週間前に配っておいた問題をやってもらい、できた人から答案チェックを受けて、全部の問題についてよしと認められたら放免される。何を参考にしてもよい、友達と相談してもよいから、とにかくちゃんとした答案を書いてもらうことが目標である。

この数学演習をもう一人の先生と二人でやっているのだが、40人弱のクラスなのにこれがいつになっても終わらない。時間割上では昨日の午後1コマ分ということになっているが、その時間内には到底終わらず、次のコマが空いているのを利用して引き続き答案をチェックして回るものの、それでも終わらない。とうとう今日の午後も使って面倒を見ることになってしまった。やはり人によってかなり出来に差があり、早い人はさっさと仕上げてしまうのに、できない人はいつになっても考え込んでいる。見かねていろいろ助け船を出しても、なかなか手が動かない。誰かのを写して持ってきても、内容について質問されたらもちろん答えられないから、楽はできないようになっているのである。もっとも、楽ができないのはこちらも同じ。最後の一人までとことん面倒を見る数学教育という理念を実現しようとすればするほど、負担が重くのしかかる。

今週の問題に、上三角行列に関する設問があった。まず行列Aが上三角行列であることの定義を問うているのだが、ある学生の答案を見ると
「対角線の左下が0になることだから、i>j のとき常にa_ij=0が成立する(i<jのとき常にa_ij=0が成立する)とき」
と書いてある。
「え?このカッコの中に書いてあるのは何なの?」
「……あ、教科書の、上三角行列の定義んとこそのまま書いたんで」
教科書を見せてもらって、どういうことか分かった。その教科書では
「行列A=(a_ij)が上三角行列(下三角行列)であるとは、i>j のとき常にa_ij=0が成立する(i<jのとき常にa_ij=0が成立する)ときをいう」
と、上三角行列と下三角行列をまとめて定義していたのである。それを丸写ししたので、下三角行列の定義部分も一緒にコピーしてしまったのだ。丸写しするにしても、少しくらいは内容に気を遣ってほしいものである。

2008年04月23日

Leonid Kubbel's Endgame Study No.42


2008年04月22日

非常勤講師二回目

非常勤講師の日なので、午後からH大に向かう。今日の広島は春を通り越して初夏を思わせる気候で、車内にこもった熱気を追い払うにはかなりの時間を要した。高速道路に入る前にガソリンスタンドに立ち寄って給油しておく。いつも同じ場所で入れているのだが、今日は128円になっていた。3週間か4週間に一度くらいしか給油しないので、次に来るときはまた税金のかかった額になっているかもしれない。山陽自動車道を走ると、目に飛び込んでくる中国山地の青さが先週以上に深く感じられた。3時半過ぎにH大に到着。給油時にリセットした燃費計を見ると、21.0キロになっていた。45キロくらいの道のりだから、2リットルちょっとしか使っていないわけだ。さすがにアクセルもブレーキもほとんどかけない道程だけのことはある。

講義は今期2回目。前回に比べると少しましだったように思うが、それでも今ひとつペースがつかめず、最後はまた急ぎ足になってしまった。1年目のときに板書が速くて追いつかないと学生に言われて以来、次から次へと書かずに一呼吸置くように心がけているのだが、どうもそれが過ぎて時間を余計に食ってしまい、結局最後にあわてて書き連ねるというパターンを繰り返している。次回はもう少し気をつけよう。

終了後またH大のT君と合流して夕飯に行く。来週から火曜日が2回続けてお休みのため、次に行くのは3週間後になってしまう。学生さんが今日までの内容をすっかり忘れてしまうのではないかと少々心配。

2008年04月21日

共同セミナー

今日は、共同研究をしている3人で行っているセミナーをしていた。忙しいとはいえ、それに流されてしまうと自分の研究をする時間が全くなくなってしまうので、なるべくこの3人セミナーは週に一度行うようにしている。とはいえ特に入念な準備をするというわけでもないので、3人で思いつきをあれこれ言い合っているうちに少しでも進展してくれることを待つ感じ。本当はもうちょっとやることを考えて臨んだ方がいいのだが、それこそ時間がなくてなかなか難しいのが現状だ。まあ今日はそれなりに有意義な計算が少しできたのでよしとしよう。

今日のセミナー中、この定理が証明されれば、我々が今考えている問題の障害の一つが取り払われて前進できるのに、という話になったときの雑談。
「これ、証明願書いて証明もらえたらいいんですけどねえ(所属する大学に在職証明の類を発行してもらう必要が生じたときは、事務方に証明願という書類を書いて提出することになっている)。でも『任意次元で正標数の特異点解消ができることを証明する』って書いてある紙もらったってしょうがないけど……所属機関長の職印が押してあったりして」
「で、論文の一番最後にAppendixとしてそれを入れておくとかね」
「論文を見た人からそれについて質問が来たら、そのまま事務に回す、と」
合間合間にこういう軽口をたたいてばかりである。

2008年04月20日

再びチェスを指しピアノを弾く

今日は中国選手権で会ったIさんからまたチェスの相手をしてくださいと言われていたので、2週間前と同じ行動パターンを取ることにした。すなわち、3時にIさんと本屋で待ち合わせして隣の喫茶店でチェスの対局。夕方に別れると楽器店のスタジオでピアノの練習をするという段取りである。前回は対局前にあれこれ偉そうに説明したが、もう今日はすぐ指しましょうということになる。こちらが黒を持って2局指したのだが、1局目は適当にやっていたら何だか相当いい勝負になってしまい、最後は負けるんじゃないかという恐怖を払いのけながら指す羽目になってしまった。ギリギリ勝つには勝ったけど、いくら何でも情けなさ過ぎる。どうも自分は頭がチェスモードに切り替わるのに時間がかかるので、大会に行ったときなども初戦はとりわけひどい手を指してしまう傾向がある。2局目は頭が慣れてきたか、比較的順当に差を広げて勝つことができた。エンジンのかかり方の遅さ、これは今後の課題だ。

終了後、Iさんと別れてから予定通り楽器店のピアノスタジオへ。バッハ=リストの「前奏曲とフーガ」とスクリャービン。ガンガンやっていたら汗が噴き出してきて、着てきたジャケットとセーターをしばらく脱いでいなければならなかった。1時間弾いてすっきりしたところで、そのへんで夕飯をすませて帰途に就いた。

2008年04月19日

折紙&ブゾーニとヒナステラ

昼食をすませ、コーヒーを一杯飲んで落ち着いたところで、またつい折紙を始めてしまった。それもコンプレックス系折紙の王道である昆虫系である。正確には蜘蛛なので昆虫ではないのだが、要するに足が2本多いわけで、その分余計に厄介だともいえる。序盤早々unsinkという特殊な折り方をさせられる箇所があり、これに大苦戦。その後もひたすら難解な工程が続き、紙がかなり傷んでしまった。ずいぶん時間をかけたのに、まだ全体の半分も行っていない。この調子では途中で破綻する可能性も高いが、折り急ぐとなおさら失敗しやすくなるので長期戦で行こう。

夕方から市街地に出かける。無印良品の店に行ったのだが、買い物をすませてから上階にあるCD店にふらっと入り、何かめぼしいものはないかと物色。クラシックはありきたりのものしか置いていないのであまり食指が動かないことが多いのだが、幸いナクソスのCDが片隅にまとまっていた。普段それほど見かけないような隠れた名曲を、良心的な値段で提供してくれることで知られるレーベルである。何枚か取り上げて迷ったのち、ブゾーニのヴァイオリン・ソナタ集とヒナステラのピアノ協奏曲集の2枚を購入。どちらも演奏者は聞いたこともない人たちだったが、こういうのはまず曲が聴けることが何より大事である。今はブゾーニを聴きながらこれを書いているが、やはりよい買い物だったようだ。

2008年04月18日

卒研セミナー

朝から強風が吹き荒れ、一部に青空が見えるのにどこかから細かい雨粒が落ちてくる変な天気。火曜日は快晴だったのに、翌日からずっと悪天候続きだ。雨は数日に一度、おとなしくしとしと降るくらいがちょうどいい。今日は午前中に4年生の卒研セミナーがあった。内容は、暗号の話題に入る下準備として計算量の評価に関する話。まだ1回目なので、こちらも学生さんも手探りで進める感じだった。だいたいのペースはつかめたから、来週はもうちょっと余裕を持ってできるだろう。

今週もちょっと忙しかったのだが、今日の午後はようやくちょっと一息つくことができた。年度の変わり目というのはどんな仕事をしていても忙しいものではあるけれど、今年は自分も含め、忙しがっている人がとりわけ多いように思う。普段定期的にチェックしているブログや日記も、読んでいるだけでお疲れ様ですと言いたくなるような記述ばかりだ。まあゴールデンウィークが過ぎるころには、今のいろいろなバタバタも収まって幾分落ち着いた日々になると期待したい。

2008年04月16日

Lettberg plays Scriabin

スウェーデン人女流ピアニスト、Maria Lettbergの弾くスクリャービン全集が数日前に届いた。去年の秋に発売されたという情報を知ってから、ずっと気になっていたのである。早速このところ聴いてみているが、期待を裏切らない演奏でなかなかよい。これまでもソナタ全集ならHamelin、エチュードや前奏曲ならLaneなどのよい録音があったが、スクリャービンのすべてのピアノ作品を網羅的に収録したものがほしいとなると、Pontiの弾く全集に頼るしかなかった。ただどうもポンティの演奏は音質もあまりよくないし、何だか全曲録音しろと言われたので弾いたというような印象で、今ひとつスクリャービンらしさが感じられないのだ。だからあまり私は好きになれなかったのだが、演奏会用アレグロOp.18や悪魔的詩曲Op.36といったかなりマイナーな曲を聴くには、これくらいしか音源がなかったのである。しかし、これからはもうレットベリ盤がある。これは今後も聴いていくことになるだろう。

今回買ったこの全集、CD8枚組でさらにボーナスとしてレットベリのロングインタビューが収録されたDVDも入っているのだが、値段は20ユーロだった。演奏のよさを考えると、かなりお買い得ではないかと思う。その昔、初めてCDというものを買ったときは、確か1枚が3,500円くらいしたような気がする。つまり今回のスクリャービン全集より高かったわけだ。時代は変わった。

2008年04月15日

非常勤講師初回

先週実施した学力テストをここ数日で手分けして採点していたのだが、それがようやく終わったので午前中は集計作業をしていた。各先生からもらったデータを一つのファイルにまとめて問題別正答率や平均点などを出す。こうしてみると、やはり個人差はかなりのものだ。

他にもいくつか仕事をすませてから車でH大へ向かう。今日の広島は快晴で、日射しの下に止めてあった車の車内はムッとするような熱気がこもっていた。つい先日まで暖房をつけずにはいられなかったはずなのだが、いつの間にか季節はだいぶ進んでしまったらしい。青空をバックに新緑の映える山々を愛でながら山陽道を快走し、3時半頃H大に到着。今日は非常勤講師の1回目である。今年で3年目なのでだいぶ慣れたつもりではあるのだが、それでも初回というのはどうもぎこちなくなってしまう。最初の10分くらいは、若干声がうわずっているのが自分でも分かった。しゃべっているうちにだんだん落ち着いてきたものの、時間配分を少し間違えてしまい、最後はかなり急ぎ足。やはり調子が出てくるには時間がかかるようだ。

終了後、H大に勤めるT君と合流して久しぶりに夕飯。彼を家まで送ってから夜の山陽道を走って帰宅した。しばらくはちょっと疲れる日が続くが、今の時期は仕方がない。

2008年04月14日

Leonid Kubbel's Endgame Study No.41


Kubbel晩年の作品。敵のQを詰めるのは396番や419番など、他にも作例がある。なお今回も若干長くなったので、盤の提示位置を少し下に下げた。

2008年04月13日

カメを折る

OrigamiTurtle2.jpgOrigamiTurtle1.jpgカメを折ってみた。作者はコンプレックス系折紙の第一人者、Robert J. Lang。紙は24cm四方の市販折紙用紙を使っている。Lang作品としては比較的簡単な部類に入ると思うが、それでもカメらしい造形を作り出しているのはさすがだ。実はもう一つ、さらにリアルなヴァージョンのカメの折り方も同じ本に収録されている。こちらは甲羅の模様から足の指まですべて折り出すという凄まじいもので、写真で見ると本物と見まがうようなできばえだ。これもできれば近いうちに挑戦してみたい。

先月頭にロブスターを折ってからもいくつかの作品にトライしていたのだが、途中で折図と違ってきてしまったり折図の指示が理解できなかったりで、ずっと失敗続きだった。何時間もかけて紙くずしかできなかったときは、徒労感ばかりがたまってしまってどうもいけない。早く完成させようと少しでも急ぐと折りが雑になって破綻するので、時間を十分かけてゆっくり進むことがやはり大切なようだ。

(折紙モデル:"Turtle", Robert J. Lang "Origami Design Secrets"(A K Peters Ltd.) 所収)

2008年04月12日

先手と後手の勝率差

お昼のパスタを食べながら「囲碁・将棋ジャーナル」を見ていた。今回の将棋の解説はもちろん先日行われた名人戦の第1局。棋譜だけはすでに知ってはいたが、改めて谷川九段の解説を聞きながら鑑賞した。超スローペースの序盤から、突然後手の羽生二冠が飛車を切る強攻に出たものの、直後から一気に形勢が森内名人に傾き、そのまま終局まで行ってしまった感じだった。結果的には飛車切りが暴発のようなことになってしまったが、あまり行儀のいい手ばかり指していても、森内名人相手では埒が明かないと踏んだのだろう。

数年前のデータだが、プロ棋士の全対局における先手の勝率はすでに55%を超えてしまっている。もちろん先手が若干有利であることは以前から経験的に知られてはいたが、近年は序盤の研究が大きく進展し、先後の優劣の差がよりはっきり現れてきているようだ。一手ごとに有利不利が激しく入れ替わるヘボ将棋ならいざ知らず、プロ棋士ともなればこの差をひっくり返すのはやさしいことではない。特に羽生・森内・佐藤といった雲上人のレベルになると、簡単に逆転するような悪手は滅多なことでは指さないから、先手であることはテニスのサーブ権を持っているのに近いように思われる(先月まで行われていた佐藤対羽生の棋王戦は、全部先手の勝ちだった)。もちろんどちらが先に相手のサービスゲームをブレークするかという楽しみはあるのだが、お互いがサービスキープを繰り返した場合、結局最終局の振り駒の結果がタイトルの行方に大きな影響を与えることになってしまう。運も勝負のうちではあるけれど、もう少し偏りを矯正できないかと考えるのは、望蜀の念が過ぎるだろうか。

将棋を知っている人間が初めてチェスに接したとき、チェスには引き分けという結末があり、さらにそれがかなりの割合で起こり得るという事実は、かなり奇異に感じられる。タイトルマッチで何十局もドローが続いて勝負がつかなかったという話を聞かされると、もはやルールの欠陥ではないかと思う人もいるだろう。しかし先後の勝率の差ということを考えれば、ドローが存在することはルールとしてそれなりに合理的であることに気づく。最初から不利な黒がそれを有利に変えるのは相当大変だが、互角に持ち込むのなら必要なエネルギーと運はだいぶ少なくてすむからだ。

将棋の場合も千日手こそあるが、起きる確率が小さすぎて釣り合いを取る要素にはなり得ない。となると、何かやるとしたら持ち時間に差をつけたりすることになるのだろう。もっともその差をどのくらいにするのがいいのか、決めるのは簡単ではなさそうだ。

2008年04月11日

忙しい週末

2日続けて天気が悪かったが、今日はやっと晴れ上がった。大学の桜はまだどうにか持ちこたえているが、マンションの前の桜は雨に打たれてさすがにかなりの花が散ってしまったようだ。

今日は午後からうちの講座に所属した4年生との面談があった。すでに月曜日に一度教員と学生全員が集まって顔合わせをしており、そのときにどの教員につくか考えておいてと学生たちに言ってあった。その答えを聞くことになっていたのである。所属学生8名のうち遅刻した1名を除く7名の希望は、3名がSa先生、2名がSe先生、そして2名が私だった。なぜかサ行の名前の教員ばかりに集まったわけだ。担当することになった2人は暗号の話を勉強したいとのことで、とりあえずその関係の本を来週から読むセミナーをスタートさせることにする。楕円曲線暗号の話題まで早くたどり着ければいいのだが、必要な予備知識の多さを考えるとそう簡単ではなさそうだ。

その他にもいろいろ仕事があり、帰るのはまたやや遅くなった。今週はどうにも忙しくて大変だった。広島に来て今年が5年目だが、一番忙しい年になるのは間違いない。

2008年04月09日

テストと演習と燻製ニシン

今日は新入生に数学の洗礼を受けてもらう日になっていた。まず午前中、解析学の1回目の講義の時間を使って数学の学力調査テストをする。今まで我々数学系教員は入ってくる学生の力を知らなさすぎたという反省のもと、高校までの数学の必須項目を一通り問い、得られたデータを今後の数学教育の一助にしようというのである。昨日もその関係の資料を作成するために残っていたのだった。自分は講義の担当ではないが、今日は助っ人として同僚の先生に同行。無事テストを終えて解答用紙を回収してきた。

お昼をすませて1時からは数学演習の時間。問題をやってもらい、一人一人答案を細かくチェックして質問する。おかしなことが書いてあったり質問に答えられなかったりしたら、ダメ出しをしてやり直してもらうのである。手を挙げた学生のところにこちらが行って答案をチェックするのだが、ぐるぐる机の間を歩き回っては腰を落としたり身をかがめたりという姿勢をひたすら繰り返すことになるので、これがなかなか大変なのだ。2コマ分の時間を使ってようやく全部の答案を見終わったときには、もうくたくたになってしまった。毎年そうだが、年度始めの最初の講義や演習はとりわけ疲れがたまるように思える。

むくんだ足を引きずって8階の居室に戻りメールをチェックすると、学生時代のピアノサークルの同期で現在札幌に住む友人から、結婚することになったとの報告が届いていた。ううむ、となると同期男性の主要メンバーで残っている独り身は、これで3人か……ふと、「そして誰もいなくなった」で有名な詩を思い出した。確か4から3は、「4人のインディアンが海に行った 1人が燻製ニシンに呑まれて3人になった」だったか。あれは、一番最後はズバリ「1人のインディアンが後に残された 彼が結婚すると後には誰もいなくなった 」となるのだけど、現実には果たしてどうなることやら。

2008年04月08日

満開の桜

CherryBlossoms.jpg昨日強い雨を降らせた雨雲はすっかり東に去り、昼過ぎには青空が広がる穏やかな天気となった。勤務先の正面の通りに並べて植えられている桜は、今が満開である。県の北部はさらに咲くのが遅いだろうから、元気があれば週末に花見に行ってもいいかもしれない。

今年度は学生委員などというものになっている関係で、昨日今日と学生向けのガイダンスに顔を出してきた。昨日が新入生向け、今日は2年生向け。まあいずれも話のほとんどは履修登録の方法とか単位に関する注意で、それらは教務委員やチューターの先生が説明を担当するから、こちらは「あ、学生委員の齋藤です」と一言挨拶するだけである。秋口に3年生が企業訪問する行事があり、その引率を学生委員がやるという話を聞いたので、おそらくそれがメインの仕事になるのだろう。

夕方は、明日までに作らなければいけない資料をまとめていた。だいたい終わらせて7時過ぎに外に出ると、細い細い月が地球照をくっきりと浮かび上がらせながら西の空に浮かんでいた。春の三日月は真下を向いているから、まさにチェシャ猫の笑いそのものだ。おまけに地球照が妙にはっきり見えるので、チェシャ猫の顔がまだ完全には消えきらずに残っているようにも見えるのだった。

2008年04月07日

Leonid Kubbel's Endgame Study No.40


ずっと後の343番でも同じステイルメイトの形が登場する。

2008年04月06日

チェスを指しピアノを弾く

2時過ぎに家を出て街中に出た。今日は、先日の中国選手権で対戦したIさんと3時から会うことになっていたのである。対局指導してくれと熱心に請われ、自分は教えるほどうまくないと何度も言ったのだが、ついに押し切られてしまったのだ。

本屋で待ち合わせし、すぐ隣の喫茶店に入ると早速駒を並べる。定跡を教えてくれというので、最初にものすごく大雑把にいくつかのオープニングを並べる。白の初手はこれが一番多くて、次がこれ。黒がこう指すとシシリアン・ディフェンスって言って、これはもうものすごく変化があって大変なんです。白は普通はこっちのナイトを跳ねるんだけど、そこでまた黒はいろいろ手があって……このポーンを突くことが一番多くて、そうすると普通は次にここでこうやってポーンを交換して、ナイトを跳ねて、でこっちもナイトを跳ねる。ここでまた黒はいろいろ手があって、この端っこを突くと、ナイドルフ・ヴァリエーションっていってトッププロの間でよく出てくるんです。あとは、こっちを突くドラゴン・ヴァリエーションってのもある。あっ、こういうふうにビショップをここに出すのはフィアンケットっていって、結構使えます。あとね……

延々とやっているうちに、こんなことをしてもあまり意味がないような気がしてきた。ちょっとやそっと定跡を覚えたってその通りになるはずがないし、指し手の意味が分からないのに丸暗記しても仕方がない。やっぱりチェスは実際に指してなんぼである。とにかくやってみましょうということで、白黒それぞれ一局ずつ指してみる。終わると並べ直しながら、中央を制圧した方がいいんですよとか、ナイトとビショップは早めに出してキャスリングした方がいいんですとか、どこかで聞いてきたことをさも強いような顔をして偉そうに講釈してしまった。しかし今日のIさんの熱心さだと何だかあっという間に追いつかれそうで、こちらが講釈されるようになるのも時間の問題だろう。実際2局目は中盤まであまり形勢に差がつかず、ちょっと焦ってしまった。

またそのうち指しましょうと約束して6時過ぎにIさんと別れる。今日はせっかく街中に出てきたので、久しぶりにピアノスタジオでゆっくり練習しようという計画もあった。予約はしていなかったが、よく行く楽器店のピアノスタジオに行ってみると空いているとのことで、6時半から1時間、グランドピアノを鳴らすことができた。昨日書いた「前奏曲とフーガ」もちょっとだけやったが、まだ譜読みし始めたばかりなので、今日のところはスクリャービンが中心。まだまだちゃんと弾けていない。来月はもう少しピアノスタジオ通いを増やす必要がありそうだ。

8時半頃帰宅。

2008年04月05日

フーガの魅力

次の演奏会が来月末だからそろそろ真面目に練習しなければいけないのだが、まだ今ひとつ身が入らない状態でいる。まともに弾けていない箇所がまだたくさんあるのに、一通り譜読みがすんだのをいいことに、つい他の曲に手を出してしまうのだ。先月まではプロコフィエフの「シンデレラ」をずっとやっていたが、今月は「バッハ月間」になりそう。朝食のときによくバッハをかけているので聴く方はほぼ毎日なのだが、ときどき弾く方もたまらなくバッハが心地よくなる期間がめぐってくる。今一番気になっているのは、リスト編曲の前奏曲とフーガイ短調。オリジナルはオルガンである。この曲が入っているRian de WaalのCDを久しぶりに聴いていたら、耳について離れなくなってしまったのだ。今日の午後は楽譜を出してきてフーガの冒頭を弾いてみていた。やっぱりいい曲である。

この曲に限らず、フーガというのは実に魅力的な形式だなとつくづく思う。静寂を破って単音の旋律が聞こえてくる。バッハはこの旋律からして実にいいのだが、しばらくして低音域からその旋律が遅れて登場し、またしばらくするとさらに低音の領域で新たにメロディーが生まれる。しかもそれらはカノンのようにただずれて流れ続けるというわけではなく、お互いが有機的に絡み合うべく少しずつ姿を変えてゆくのである。干渉し合いながらも融合してしまうわけではなく、かといって分離してしまうわけでもない。つかず離れずの状態を保ちながら全体が大きくなっていき、いつの間にか巨大な音の塊ができていくのだ。それはまるで、微生物が自己増殖を繰り返して巨大化していく様のようである。もしかしたらフーガを弾く心地よさは、生物を創造する神になった気分から来ているのかもしれない。

2008年04月04日

イギリスの新硬貨

今日見つけた、ちょっと感心したニュース。イギリスで1ポンド以下の7種類の硬貨のデザインを一新することになり、王立造幣局がデザインを公募していたのだが、このたび採用されたデザインが発表された。感心したのはそのデザインの斬新さ。国章にある盾がモチーフとなっているのだが、1ポンド硬貨以外の6つの硬貨は盾の一部がデザインされており、これらを適当な位置に置くと盾の全体像が浮かび上がるようになっているのだ。最初はエイプリルフールのネタなのではないかとすら思ったが、発表されたのは4月2日だから嘘ではないらしい。丸い穴の向こうに盾があるようで、何とも格好いいではないか。考案したのは26歳のデザイナーだそうである。

それにしても硬貨のデザインを公募するというのは、日本ではまずありそうもない話である。仮にあったとしても、こんなデザインが採用されることはますますありそうもない。日本なら、こういうものを決めるときの基準は、何よりもまず「偽造のされにくさ」であろう。もちろんそれはそれで大事なことなのだが、こういう斬新なデザインのコインを見せられると、ちょっとうらやましさも感じてしまうのだった。

2008年04月03日

部屋の引っ越し

学部改編に伴う諸々の理由により、今年度から勤務先の居室を引っ越さなければいけないことになった。今までは5階にいたのだが、今年からは8階のそれも北側の一番奥、トイレのちょっと手前というあまりパッとしない位置。講義室へ行くにも食堂に行くにも、今までより1分は余計にかかりそうだ。気は進まないが、決まったものは仕方がない。

一昨日、昨日とずっと準備をしていたが、ようやく今日本格的に移動を開始した。同僚の先生の助けを借りて重い重い机を台車に載せる。エレベータで8階に上がり、がらんとした部屋で重い重い机を設置する。台車を引いて舞い戻り、重い重いキャビネットを台車に載せる。エレベータで8階に上がり、机だけが置かれた部屋に重い重いキャビネットを設置する。台車を引いて舞い戻り……とまあ何度往復したことか。疲れてしまったので、今日のところは重いものの移動だけでやめておいた。本や論文はまだ持っていっていないし、ネットワーク環境もまだ整備されていない。落ち着くまでにはまだかなり時間がかかりそうだ。

2008年04月02日

魔術館の一夜

家を出るとき、駐車場の横に立っている桜は五分咲きくらいになっていた。ここ数日はさほど寒くもないから、あと数日で満開になりそうだ。一方、大学の正面を走る道路に沿って桜が植わっているのだが、今日その前を通過したときには、まだ花は全くと言っていいほどついていなかった。あの分では満開になるのは来週だろう。ちょっとした環境の違いで咲き方に差が出るものだ。

CardAngel2.jpg昨日書いたカードの印刷ミスの話は、もちろん嘘である。裏模様が微妙に中央からずれていたりすることは実際にあるらしいのだが、さすがに天使の手の向きが反対になっていたなんてことはまず起きないだろう。カードを1枚横向きにしてすぐ下のカードと角をぴったりそろえて持ち、その上から数枚のカードをカモフラージュのためにずらして重ね持っていただけである。そう思って昨日の写真を見れば、上の三枚のカードが横向きのカードをギリギリで隠していることが分かってもらえるだろう。だいたい、本当に印刷ミスを見つけたならそのカードを直接見せればいいわけで、こんなふうに一部分しか見せないというのはかなり不自然なことなのである。もしあまりそう思えなかったとしたら、カードを扇状に広げるというよくある行為が、ちょっとしたミスディレクションになっていたと言えるかもしれない。

バイスクルの印刷ミスを発見したととぼけてみせるこの小ネタは、私が考えたものではなく、元々は泡坂妻夫氏の本に出ていたものである。手元にないのではっきりしないが、確か「魔術館の一夜」ではなかったかと思う。もう読んだのは20年くらい前だが、そのちょっと小粋なアイディアに感心してずっと覚えていたのだった。

2008年04月01日

おかしなトランプ

4月1日。また新しい年度が始まった。

CardAngel.jpgU.S.Playing Card社製のBicycleというトランプは、滑りがよくて手によくなじむとしてカードマジシャンの必携アイテムとなっている。自転車らしきものに乗っている天使の図柄は、テレビなどで見た方も多いだろう。最近はTally-Hoという別のブランドも人気が出てきているようだが、シェアとしてはやはりバイスクルが圧倒的であるように思う。

自分も何個か持っているのだが、先日何気なくカードを広げながら裏模様を見ていたら、ふとおかしなことに気づいた。カードの四隅には天使が印刷されていて、左上隅にいる天使は向かって右の方向に両手を向けているのだが、1枚だけ、両手を左側に向けているカードがあるのである(左手で持っているカードの上から4枚目)。そんなはずはないと思ったが、確かにそのカードの天使だけは他の同志とは逆の方向に両手があるのだった。

実はこうした印刷ミスはしばしば起きることで、カードの裏模様が中央からずれていたり全く印刷されていなかったりという事例は耳にしたことがある。今回のように天使の向きが逆というのも前例があるのだろう。よくコインや切手などでミスのあるものが見つかるとコレクターの間で大変な高値がつくことがあるが、このカードについてはあまり期待はできそうにない。