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ルネ・マグリットの絵を見て (1)

GoogleMagritte.pngGoogleに行ったら、タイトルロゴがいつもと変わっていた。何かの記念日などにGoogleがよくやるお遊びの一つだ。今回のデザインの由来は、いわずとしれたルネ・マグリットである。今年はマグリットの生誕110周年であり、11月21日は彼の誕生日なのだそうだ。

まだ東京で学生をしていたときに、渋谷のBunkamuraで行われたマグリット展を見に行ったことがある。もう6年くらい前の話だ。会場はかなり混雑していて彼の絵の人気の高さをうかがわせたが、その中でも特に「光の帝国」や「大家族」などの有名な作品は注目度も高いようだった。もちろんそれらも面白かったのだが、個人的には他の人たちがあまり気に留めていなかったある2枚の絵に強く惹きつけられた。その絵に描かれているものに、ちょっと見ただけでは分からないような意味が隠れていることに気づいたからである。少なくとも、その場でそのことに気づいたのは自分だけのように思われた。それがこっそりマグリットと会話を交わしたような気がして、何とも心地よかったのである。

Magritte-LeMat.jpgその1枚目は、「チェックメイト」(原題:"Le Mat" (1936))という作品だった。白のキングらしい人物の胸に、黒のビショップと思われる人物がナイフを突き立てており、そこから鮮血が流れ出ている。なるほど、敵将を仕留めた瞬間だから、チェックメイトというわけか。そこまでは誰でもそう思う。実際、展覧会に来ている人たちはその程度のことを思うくらいで素通りしていくようだった。だが、チェス好きとしてはもちろんそれで終わらせるわけにはいかない。白のキングの横にある白い塔、これは明らかにルークを思わせる。しかし他は何だろう?特にルークの前にある、この渦を巻いたような妙な物体は……そう思った次の瞬間、すべてを悟ったのである。そうか、まさに「チェックメイト」ではないか!ルークの前にある渦巻きオブジェは、黒のナイトを極度に抽象化したものだ。そして画面の手前に転がっている2個の球、これも黒のポーンの抽象的表現に違いない。そしてそれらの駒を頭の中のボードに並べたとき、紛れもなくそれはメイトの局面だったのである。ぞろぞろと足を止めずに通り過ぎていく人の列の中で、私はほんの少しにやりと頬がゆるむのを抑えきれなかった。

今になってこう振り返ってみると、そんなことは気づかない方がおかしい、と思われるかもしれない。確かに手前の妙なオブジェたちが何かと考える気にさえなれば、チェス盤の上にある以上、それらはナイトでありポーンであると判断するのが自然だろう。しかし、これを見たのはマグリット展の会場だったのである。ほとんどすべての絵に、こんな感じの球体やそれに近いものが浮いていたり転がったりしているのだ。だからこの絵が実際のメイトの盤面を表していると気づくのは、それほど簡単なことではなかったのである。

なお、この絵はマグリットが通っていたブリュッセルのチェスクラブ Cercle d'Echecs de Bruxelles に寄贈されたものである。後年になって、マグリットの友人のシュールレアリスト、ポール・ヌジェ (Paul Nougé) の著作 "Notes sur les échecs" の表紙にも使われた。

マグリット展で気になったもう1枚の絵については明日。

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コメント

同じ会場か、別の展覧会か、記憶がさだかではないですが、私と畏友もこの絵は見てます。
二人とも、「球」と「バイオリンの頭」が何であるかは自明のことと思ってしまったので、感想は「ひねりが無い」「まんま」でした。
でも、なるほど、言われてみれば、そこは「気が付くと面白い」と見るべきなんですね。

 Bunkamuraのマグリット、私も行きましたが、これを見た記憶が…(汗。盤上から1マスはみ出したマスにやはり城のようなルックが立ってる絵は覚えているんですが。
 これ、レトロ問題とすると、...Bb2+, Rd1、今一ですね。

> maroさん
やはりチェスに慣れ親しんでいる人にとっては自明のことのようですね。
ただ、当時私は今のようにチェスを指しに行ったりは全くしておらず、
チェスプロブレムすらやっていませんでした。文字通りルールを知っているだけの状態だったのです。
だから頭の隅で眠っていたチェスの知識を十数年ぶりに呼び起こして
メイトであることを確認できたことが、何か妙にうれしかったのでした。

> 水野さん
..Bxb2#, Qb2, Ba3+ などと戻す手もありますね。いずれにしてもレトロとしてはいまいちですか……。

誰も考えないようなユニークなideaを生み出せる人は、本当の意味で頭がいいのですね。
「知識」より「想像」に魅力を感じますし大切にしたいです。

マグリットの絵のアイデアは分かりやすくて入っていきやすいですね。
そこも魅力の一つではないかという気がします。

「白がO-O-O(キャスリング)していたとすると、本図に最も近い可能性は何手前か? ただし、途中でチェックは掛かっていなかった。手数(何手前か)と手順例を示せ」
というレトロならばいかがでしょうか。
今考えてみたのですが、読み抜けだらけかもしれません。。

Bを追い出すのに手数が必要になるわけですね。

もっとも、本当はこの絵では盤面のどこなのかが分からないんですよね。
だからc1にKが来るように配置したのは、キャスリング風味を出そうとした私の趣味です。

Google のロゴデザインは ルネ・マグリット に関連したものだったのですね。

勤労感謝の日に関連した何かかな?と思っていました。

検索してみると Google のロゴを集めたサイトが結構ありました。

今年のオリンピックに関連したロゴがいくつかあって面白かったです。

Googleのロゴは何の前触れもなくときどき変わっていて、おやっと思いますよね。
それをきっかけにして、その日がどういう記念日であるかを知ることも少なくありません。
オリンピックが開催されていたときは確か毎日のように違うロゴになっていました。

>Bを追い出すのに手数が必要になるわけですね。

はずれで~す。
こちらの勘違いだったりして……。

そうですか。ただ、正直に言うと
「白がO-O-O(キャスリング)していたとすると、本図に最も近い可能性は何手前か?」
という設問の意味がよく分からなかったのです。だから意味を取り違えているのかもしれません。

マグリット財団
http://www.magritte.be/

言語を選択したあとのページで中央左にマウスポインタを持って行くとコンテンツが現れます。

Virtual gallery でいくつかの絵を見ることができました。

静かなピアノの曲が流れています♪

流れているのはサティのジムノペディですね。
このページを含め、マグリットの絵を紹介しているところをいくつか見てみましたけど、
今回話題にした絵は見つけられませんでした。

確かに日本語が変ですね。すいません。。

…… A.O-O-O …… B...●●●# (A,Bは手数、●●●は黒の手)
の手順で本図に至ったとする。B-Aが最小のとき、手数AからBの手順例を示せ。ただし、途中でチェックは掛かっていなかった。

という意味です。

ただし書きのところは、
「ただし、A.O-O-Oの後、白にBの手があった」の方がよいかもしれません。

ははーん、分かった。
1.0-0-0 Bxd1 2.Rxd1 Bxb2#
という感じですか?

d1に黒の利きがあると、キャスリング出来ませんよね。。

あ、そうだ!お恥ずかしい……。

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