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竜王戦と打歩詰

3日前の扁桃腺の腫れはその日だけですぐに引いたのでもう大丈夫と思っていたら、今日になって急に鼻水が止まらなくなってしまった。私は1年に1回か2回はこの状態になる。汚い話で恐縮だが、普通に顔を前に向けているだけでどんどん出てきてしまうのでもうたまったものではない。周りに人がいないとティッシュを鼻に詰めたりしているのだが、勤務先でそんな間抜けな格好をしているわけにもいかず、日中はちょっとつらかった。

HabuWatanabe.png鼻を押さえつつ7時半頃まで将棋竜王戦第4局の中継を見ていたのだが、今日の勝負はすごかった。ここまでの3局はいずれも羽生名人が勝っており、もしかしたら今日が永世七冠誕生の日となるかもしれないというので、世間の注目度も一段と高まっていたようだ。第3局までももちろん熱戦ではあったのだが、今日の一局がここまでで一番の名局であったと言っていいのではないかと思う。両者とも持ち時間の最後の1分まで使っての死闘だった。幾度も微妙な局面を迎えつつも、ついには羽生名人の勝ちかと思われたそのとき、絶体絶命に思われた渡辺玉が何と打歩詰で不詰。最後の最後で逆転し、136手で渡辺竜王が勝って防衛に望みをつないだ。

プロの対局の最終盤で打歩詰が問題になることはたまにあるが、やはりこういう大一番でそれが勝敗を分けると、先人は実に素晴らしいルールを設けてくれたものだなあと改めて思う。相手玉が詰むのか詰まないのか、自玉が詰むのか詰まないのか。一手違いの終盤においては、当然ながらそれが勝負の分水嶺である。しかし、結果は天国と地獄ほどに違うにも関わらず、詰むか詰まざるかの違いは実に微妙だ。幅のない尾根の上に置かれているボールのようなもので、わずかなバランスのずれでどちら側に勝利が転がり落ちるかが決まってしまう。打歩詰とは、尾根の上のボールを詰まない方向にほんの少し押し戻すそよ風みたいなものだ。それはほとんど感じることもできないような微風なのに、勝負に決定的な影響を与えることがあるのである。

詰将棋の世界も、打歩詰というルールがなかったら今とは比べものにならないほど底の浅いものになっていたはずだ。詰むのか詰まないのかという大きな違いがいかにギリギリの差異から生じるのか、打歩詰というルールはそれを示す象徴的な存在といえるだろう。

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