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竜王戦最終局

いやはや、すごかったとしか言いようがない。将棋竜王戦最終局は渡辺竜王が勝ち、竜王位防衛、初代永世竜王の称号獲得、そして将棋界のタイトル戦七番勝負で初めてとなる3連敗後の4連勝を達成した。中終盤は形勢が二転三転、もう勝負がついたと思ってはまた逆転の繰り返し。期待通りというより期待を遙かに超えた名局だったと思う。多分本局は、初代永世竜王を決めた大一番として棋史に残るに違いない。

それにしても、どんな脚本家でもここまで劇的なシナリオを書くのは都合がよすぎるとためらうのではないだろうか。羽生名人が3連勝、それも第3局はかなり差のついた内容で、もうこれは決まったかと誰しもが思ったとき、第4局で絶体絶命の渡辺玉が打歩詰になって逆転。そこから盛り返し、第3局のお返しとばかり第6局では渡辺竜王が新手を繰り出して完勝。そして雌雄を決する最終局は、新手が出た第6局と同じ出だしから、クライマックスはどちらが勝っているのかも分からない凄まじい終盤へ……ドラマでこんな展開を見せられたら、「現実はこう都合よく行くわけない」と思ってしまうに違いない。すべてができすぎているのである。実際にこういうことが起こったのだということに、改めて驚きを禁じ得ない。

羽生名人はこれまで七冠達成を筆頭に数々の輝かしい偉業を打ち立ててきたが、一方で一手詰の見逃しやネット棋戦でのクリックミスによる時間切れ反則負けといった、耳目を集める敗戦の記録も作ってきた。今回、それに「将棋界初の3連勝4連敗」という記録が加わることになってしまったわけである。将棋界の第一人者が負ける方で名を残すことになったのは皮肉なことだが、勝つことでも負けることでも名前が出てくるということは、とりもなおさず最前線でギリギリの勝負を繰り広げ続けていることの証左に他ならない。永世竜王の称号は、またこの先挑戦する機会があることを期待しよう。そして少し落ち着いたら、またチェスを指しに行ってもらいたいものである。

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