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考える人

先週末、立ち寄った本屋で「考える人」という季刊誌が目にとまった。「ピアノの時間」という特集が組まれていたからである。立ち読みしてみるとピエール=ローラン・エマールのロングインタビューが出ている。これは「買い」だ。

だいぶ前にも書いたが、エマールといえば自分にとってはやはり「幼子イエスに注ぐ20のまなざし」の名演の印象が強い。実際、彼はメシアンを始めとした現代音楽の正統的演奏者として世界的名声を得ていると思うが、近年はバッハやベートーヴェンの演奏でも有名なのだそうだ。この雑誌でも冒頭で「2003年に発表されたベートーヴェンのピアノ協奏曲全集でエマールの存在を初めて知ったという人は多いはず」という紹介をしていて、自分のような、エマールといえばメシアンと思っていた人間にとってはちょっと意外だった。そしてインタビューを読んでいておやっと思ったのは、彼が自分の生い立ちを語る中で数学についてふれていたことである:

「他にも興味を惹かれるものがありました。私にはどうやら数学の才能があったらしいのです。数学の先生は、私がピアノのコンクールに出て音楽家になろうとしていることを嘆いていました(笑)。」

ここにもまた、数学と音楽(ピアノ)をともに好きな人がいたわけである。この2つ、さらに加えるならチェス(あるいは将棋・囲碁)の親和性はやはり相当強いものがあるといっていいだろう。しかしエマールに数学の才能があったというのは、いわれてみればさもありなんという気になる。メシアンのあの楽譜を正確に読み解くためには、ある程度の数学的素養が要求されるであろうことは想像に難くない。

ところで、この季刊誌には吉田秀和の対談も収録されていた。1913年生まれとあるからもう95歳にはなっているはずだが、昔と少しも変わらぬ様子で元気に音楽を論じている。さらに高橋悠治のインタビューも収録されていて、それによるとピアニストだった彼の母もやはり95歳で、今も毎日1時間はピアノに向かっているのだそうだ。彼が子供のとき、お母様はどんな曲を弾いていらしたかというインタビュアーの質問に対する高橋の答えが、

「バッハ=ブゾーニの「シャコンヌ」、ショパンの「幻想曲」、セザール・フランクの「前奏曲、コラールとフーガ」。いまもセザール・フランクが一番好きらしい。」

思わず膝を打ちたくなるような素晴らしい選曲だ。こんないい曲を子供のときに聴かされて育つと、なるほどこういう大ピアニストになるわけかと納得してしまった。

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