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インクまみれの手

うちの大学はごく一部の部屋を除き、ほとんどの教室の正面にあるのはホワイトボードである。今の時代、数学科とそれに近い分野の建物を除けば、黒板はだいぶ少なくなってきているのではないだろうか。ホワイトボードでも構わないのだが、困るのはペンがすぐにかすれてきてしまうことだ。学生から「ノートがとりにくい」と文句を言われないよう、字を大きめに書いたりするなど気をつけてはいるのだが、肝心のペンが書けなくなってしまってはどうしようもない。だからどうしても何本も用意していく必要があるのである。

今日は午後に講義があったのだが、持って行ったペンがすぐに元気をなくしてしまった。早速ペンを変えるが、これがまた力ない足取りである。困ったなと思って教卓の下をふと見ると、使い古しのペンが何本が転がしてある。この中にまだ使えそうなのがあるかもと思い、しゃべりながらペンを取り出して蓋を開けた。
「……えー、これね、多項式環っつうやつだけどもね、これがね……うわっ!」
思わず声を上げたのは、もちろん多項式環に驚いたからではない。ペンの蓋を開けた瞬間、中のインクが大量に飛び散ったのである。どうもペン先からインクが漏れだして蓋の中一杯にたまっていたらしいのだ。おかげで手は広範囲にわたって真っ黒である。服にかからなかったのは幸運だったというほかない。結局その後は、かすれ気味のペンをインクまみれの手で持って続けるしかなかった。

講義が終わった後に洗面所でかなり念入りに手を洗ったが、爪の中に入り込んだインクはどうしても取れなかった。帰宅してからさらにしつこく洗ってみたものの、爪の奥の黒ずみは頑として消えない。これは少し時間がかかりそうだ。こういうことがあると、やっぱり黒板とチョークの方がいいなと思ってしまうのだった。

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