今日はどうも低調な一日だった。講義や演習が入っている水曜日に比べると、木曜日は予定が少なくて幾分楽だ。だからこういう日こそ有意義に使うべきなのだが、今週中に片づけなければいけない2つの仕事をだらだらとやっていたら、ほとんどそれだけで一日が終わってしまった。集中して取り組んでいれば、もっとずっと早く終わっていたはずなのだ。「今日は時間に余裕がある」と思うとすぐ怠惰になるからいけない。それでそろそろ帰ろうというときになって、大して仕事が進んでいないことに初めて気づくのである。「射撃しつつ前進」の精神をもう一度思い出さなければいけない。
最近は、朝出勤する前に少しだけピアノを弾くのが日課になっている。演奏会までもう3週間ちょっとしかないのに、こう毎日忙しくてはろくに練習もできない。今の生活で一番落ち着いてピアノに向かえるのはいつかと考えたら、実はこの時間帯だったのだ。もっとも、ピアノといっても電子ピアノだし、ヘッドホンで2回か3回通して弾くくらいが精一杯である。時間にしたら30分にもならない。それでも、繰り返していると少しずつ指が曲を覚えていってくれるようで、それなりに意味はあるように思う。
電子ピアノの蓋を開け、冒頭の部分を弾き出すと、指がときどき滑ることがある。黒鍵を弾こうと指を持っていくと、スルッと滑ってその隣の白鍵に落ちてしまうのだ。練習を始めた最初の数分間に多く、しばらくすると指が鍵盤に吸い付くようになってくる。直前まで皿洗いをしていることがあるので、もしかしたら洗剤の成分がわずかに残っていて手が滑りやすくなっているのかもしれない。
鍵盤が滑るということで思い出すのは、ホロヴィッツを始め一流ピアニストが弾くスタインウェイピアノの調律師をしていたフランツ・モアが、自身の著書で書いていたエピソードだ。本を実家に置いてきてしまったので細部は覚えていないのだが、確かモアがルービンシュタインのリサイタルに同行したときのことだったと思う。すでに客席に客が入り、あとは本人が出て行って演奏するだけ、というときになって、舞台に置いてあるあのピアノは鍵盤が滑って弾けないから何とかしろ、とルービンシュタインがモアに言ってきた。モアが直前に鍵盤を拭いたのがいけなかったらしい。しかし開演を待つ客がいる目の前で、あれこれメンテナンスをする時間はない。困ったモアが考えた窮余の一策は、ヘア・スプレーを持って行って鍵盤に吹き付けることだった。舞台に一人で出ていって、鍵盤に向けてシューッ、シューッとやったのである。これが思いの外うまくいき、ルービンシュタインも上機嫌だったので、それ以後モアはヘア・スプレーを持ち歩くようになったという。
ただ、うちでこのアイディアを実行するのはやめておこう。ピアノはスタインウェイではないし、私もルービンシュタインではない。
テーマはごく単純なものなのに配置はゴテゴテと重く、駄作と評価されても仕方がない。Kubbelは本作をどこにも発表しなかったが、それも無理からぬことといえよう。なお、このフィニッシュは94番で登場したものである。
どうにも忙しい一日だった。講義担当者としての仕事、演習担当者としての仕事、卒業研究指導の仕事、何とか委員としての仕事、何とかワーキンググループとしての仕事、何とか担当としての仕事、研究者としての仕事......それらが入れ替わり立ち替わりしながら舞い込んでくるから、息つく暇もなく頭のチャンネルを切り替えては作業にあたらなければいけない。すっかり疲れてしまった。今月は当分こんな感じになりそうだ。
朝は晴れていたのに、夕方から雨になった。8時過ぎに帰宅。
今日は岡山で詰備会の会合が行われる日である。広島に来てから、詰将棋全国大会の他には松山の詰四会と岡山の詰備会には参加するようにしている。今日はバタバタしていて家を出るのがいつもより遅くなったうえ、バスの時刻表が改正されていることに気づかずに家を出てしまい、予定の新幹線より大きく遅れてしまった。バスと在来線と新幹線を乗り継ぐから、出だしでちょっと乗り遅れただけで遅れが増幅していってしまう。集合場所の岡山市民会館に到着したときはもう2時半近くになっていた。
今日は常連のNさん、Sさん、Tさんあたりはおいでになっていなかったが、その代わり短編の大御所であるSさんが久しぶりにお見えになっており、また若い高校生の人たちが3人も来ていたりして、全体としては普段と変わらぬ盛況ぶりだった。特に高校生になったばかりというM君が、自作の詰将棋を何十作も持ってきたのにはびっくり。しかもそのどれもが、本格的で入選に値するような好作ばかりである。まだ創り始めて1年足らずだというから驚きだ。聞けばすでに一流の詰将棋作家と交流があるそうで、それで急速に実力をつけてきたのだろう。やはり若いと吸収力も並みではない。今後どれだけの大物作家になるか楽しみだ。
会合の席では、以前創ってみた試作品を他の方に見てもらう。何人かでああでもないこうでもないと言いながら解いてくれたが、幸いにしてすぐダメ出しされるようなことはなかった。あまり出来がいいわけではないが、一応これは次回の詰四会作品展に出すことにしよう。2007年の秋を最後に詰将棋を創っていないから、これが掲載されたらほぼ5年ぶりということになる。現状を考えるとなかなか難しいが、もう少し創作頻度を上げたいものだ。
5時に会合が終了した後、場所を移して居酒屋で2次会。7時頃に散会して帰路に就いた。
行楽にうってつけの好天に恵まれた土曜日だったが、今週はあれこれ仕事が降ってきてえらく疲れたので、お昼までは家でごろごろしていた。まだ身体が連休モードから脱し切れていないのかもしれない。
夕方からショッピングセンターに買い物に出かけた。衣料品店でルームウェアを買い、行きつけのパティスリでお気に入りのお菓子を買い、スーパーの食料品売り場で残り少なくなったタリアテッレを買い......と行く前にいろいろ計画を立てていた。ところが行ってみると、衣料品店では探していたようなルームウェアが見つからず、パティスリではお目当てのお菓子はすでに売り切れ、食料品売場では買いたかったタリアテッレはおくのをやめてしまっており、事前の計画はことごとく頓挫。まあツイていない日とはこういうものだ。手早く夕飯をすませて7時半頃帰宅した。
将棋界でも名人戦が進行中だが、今日からモスクワでもチェスのタイトルマッチが始まっている。AnandにGelfandが挑む世界選手権である。個人的にはAnandに分がある勝負かなという気はしているが、勝負事はどう転ぶか分からない。今日の第1戦は先ほどドローで決着したようだ。これから毎晩のように対局が行われるから、チェスファンにはたまらないだろう。
昨日はオープニングセレモニーが行われており、そのときの様子がChessbaseで紹介されていた。お偉方のスピーチや初戦の先後決めなどが行われた後、ピアノの演奏が披露されたそうだが、そこで10歳かそこらの少年が華麗にショパンを弾いてみせたらしい。掲載されている映像を見ると、確かに大勢の観客を前に堂々としたもので、ただの余興だと思っていた観客も予想以上の演奏に驚いているようだった。実際、あの年齢であれだけの演奏ができるのは相当な逸材だと思う。長髪も決まっていて、何年かしたら二枚目ピアニストとして頭角を現すかもしれない。
今日は昨日の夕方に回収した演習問題の採点をしていた。持って帰ったその日のうちにある程度処理してしまえばよいのだが、たいていは疲れ切ってしまって何にもしないまま家に帰ってしまう。だから木曜日はいつも採点から始まるのだ。一人一人に間違いに対するコメントを書き込んだりしていると、これがどうにも時間がかかって仕方がない。ただの計算ミスを指摘するだけならまだいいのだが、導いた答えから得られる結論がまるでおかしくて、その概念を理解しているのであれば絶対にそうは書かないであろうことが書かれていたりすると、何がどう変なのかと細かく指摘せずにはいられなくなってしまうのである。ある答案にあれこれコメントして、次の答案に行ったらまた同じ間違いが書いてあったりすると、やはり同じように書き込みをしなくてはいけない。これが何枚も続くとだんだんうんざりしてきて、つい目の前のマウスを手にして一瞬の現実逃避に走ってしまう。こんな調子だから、なかなか前に進まないのだ。かくして、今日も延々と時間を費やしてしまったのだった。
来週頭までに書かなければいけない書類がいくつかあり、答案の採点後はそれを片づけた。8時頃帰宅。
忙しい水曜日。朝から会議があり、午後は解析学の講義と演習。演習の時間はその場で配付した問題をやってもらい、机間巡視しながら質問を受け付けるスタイルでやっているが、今日はやたらと質問が多くて大変だった。先月のうちは質問があってもおずおずという感じだったのに、連休明けは何だかみんな遠慮がなくなってきたような気がする。もっとも、理解していないのなら黙っているより質問してくれる方がずっといい。
将棋名人戦第3局は2日目の対局が今日行われていたが、つい先ほど羽生二冠が投了したようだ。これで森内名人の2勝1敗となった。お昼頃までは羽生二冠の攻めが切れ模様で、まだ明るいうちに終局してしまうのではないかと言われていたが、不利になってからも粘りに粘り、最後は両者1分将棋になったらしい。タイトル戦はこうでなくてはいけない。ここまでは順当に先手を持った方が勝っているので、やはり後手番でブレークした方が大きく勝ちに近づくことになるだろう。2週間後の第4局も注目したい。
今日から、将棋名人戦の第3局が始まっている。第2局まで終えて1勝1敗であり、ここでどちらが勝つかは重要な意味を持ってくるだろう。勝負がつく明日が楽しみだ。
ネット上の生放送で加藤一二三九段が本局の解説をしていたのだが、遅い局面の進行を待つ間、視聴者からの質問にいつもの調子で口角泡を飛ばして面白おかしく答えていた。確か棋譜並べに関する質問に答えたときのことである。「我々プロ棋士は盤駒は使わず、頭の中で棋譜を並べられるんです」と言った後、「そうだ、ピアニストのリヒテルという人がいるんですが......」と思わぬ話題を持ち出した。「リヒテルという人は、ある時期から暗譜をやめたんですね。若いときは全部暗譜して弾いていたんだけど、それだと弾ける曲が限られてしまう。暗譜をやめてから、演奏する曲のレパートリーが広がったっていうんですね。だからプロ棋士も、全部頭の中で並べていればいいかどうかは分かりませんけどね」というようなことをおっしゃったのである。リヒテルがある時期から楽譜を見ながら弾くようになったのはよく知られているが、将棋の解説中にそんな話が飛び出すとは思わなかった。加藤九段、ああ見えてなかなか話題豊富な人である。
むやみに暗譜しようとすべきでない、とは学生時代に所属していたピアノサークルの先輩も言っていたことがある。我々アマチュアは限られた時間でしか練習できないのだから、覚えることに時間を割くくらいならもっと本質的な練習をした方がよい、というわけだ。実際、その通りなのだろうと思う。ただ私自身は、演奏会で弾くときにはやはりなるべく暗譜するつもりでいる。連弾や2台ピアノはまた別だが、ソロの演奏で楽譜を見ながら人前で弾いたのは、この20年でおそらく一度だけ、1年前の演奏会のときのみだ。そのときに感じたのは、演奏中に楽譜と鍵盤を目が行き来することで、どうも気が散ってしまうような気がするということだった。今どちらに目をやるべきかということに頭がいって、肝心の音に集中できないのである。やはり自分のような下手の横好きは、完全に覚え込んでしまうのが性に合っているようだ。
次回の演奏会まで、明日で残り1ヶ月になる。自然に暗譜するくらいまで、もっと練習しよう。

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