穏やかな指し方

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午前中はNHK杯将棋トーナメントを見る。今日は糸谷五段対北島六段という顔合わせ。糸谷五段は驚くような早指しでトップ棋士を次々となぎ倒し、この棋戦で2年連続準優勝した実績を持つ(決勝の相手は両方とも羽生名人(当時)だった)。今回も今日から快進撃が始まるのかと思っていたら、後手の北島六段が相手の攻撃をうまくかわし、鋭い寄せを見せて勝ってしまった。終盤、自陣に金を打ち込まれたとき、放置しても大丈夫と秒読みの中で読み切って攻め合いに出た判断には感心した。

対局を見ていてもう一つ感心したのが、北島六段の指し方だった。どんなに緊迫した場面でも、ゆっくりと落ち着いて駒をやさしく動かす。秒を読まれてもあわてるようなこともなく、また駒をたたきつけるようなこともなく、ひたすら淡々と優雅に駒を運ぶのである。糸谷五段の指し方が何しろ素早くせわしない感じなので、その穏やかさがいっそう際立つように感じられた。

最近はしばらくお休みしているが、チェスを指しに行くと、駒の動かし方がやたらに元気な人がいる。駒を盤にコーンと打ちつけたり、目にもとまらぬ早さで駒を移動させたり、チェスクロックを力の限り叩いたりする。相手の駒を取るときも、まず自分の駒をガチャンと勢いよく衝突させ、押し出された敵の駒を同じ手でつかみ取るというパターンが多い。残り時間が少なくなってきているときなら誰でもそうなるが、それこそ糸谷五段のように、序盤のうちからそのスタイルで指す人も少なくない。なかなか迫力があるので、最初はそれだけで気圧されてしまいそうになったものだ。

もちろん将棋であれチェスであれ、こうしたゲームはどういう手を指したかがすべてであり、どういう所作で指したかは内容とは全く関係がない。駒を打ちつけようがチェスクロックを激しく叩こうが、それはその人のプレースタイルなのだから本人の自由であり、何の問題もないと思う。ただ私自身についていえば、少なくとも時間に余裕のある段階では、あまり大きな動作や音を伴う指し方は控えたい。慣れていないときに私が一瞬感じたあの軽い戸惑いを、相手に感じさせてしまう可能性は排除しておきたいのである。そんなこともあって、北島六段の指し方に感じ入ったのだった。

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コメント(2)

全く、得たりとばかりのお話しです。
先ずは、この北島六段の穏やかな指し方のビデオを、
加藤一O三先生に御進呈したい所ですね。
盤上の駒が飛び散る程に叩きつける必要はありませんヨと。笑

チェス界に今でも、そんな“ 有音 ”プレイヤーが居るのですね。
70年代、黎明期の日本チェスに、将棋の世界の方が参入してました。
私の相手のSアマ名人もそのひとりで、アラン限りの力でピースを叩きつけて、
返す刀で私を睨み付けておられました。笑
当時、有名将棋指しと云う事で、誰もマナーをしつける事が出来なかったのでしょうネ。

まあピースやクロックをたたきつける人がいても、
それはK九段のようにその人の個性でもありスタイルでもあるので、
それはそれでいいのではないかとは思いますけどね。
ただ、音や動作ばかり派手で指した手が平凡だったりするとちょっと恥ずかしいですからね。
私個人はなるべく静かな手つきで指したいと思っています。
穏やかな手つきなのに指し手は厳しい……というのが理想なんですが、
現実には手つきも指し手も穏やかになってしまうのが悲しいところです。

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このページは、natsuoが2011年8月21日 23:59に書いたブログ記事です。

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