詰むや詰まざるや

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今週の初めに、詰将棋界に訃報が流れた。詰将棋作家であり、全日本詰将棋連盟の前会長であった門脇芳雄氏が17日に亡くなられたとのこと。享年78。先週は14日にも詰将棋作家であった吉村達也氏が鬼籍に入られており、詰将棋界でよく知られた方が相次いで世を去ることになった。吉村氏とはお会いする機会がないまま終わってしまったが、門脇氏とは詰将棋全国大会や東京の詰工房の席上などで何度かお目にかかったことがある。最後にお会いしたのは、3年前の全国大会の場だっただろうか。また、門脇氏は病に倒れるまで、昨年出版された「四百人一局集」の編集に携わっておられた。その原稿をメールで門脇氏にお送りしたのが2009年の大晦日の午後11時半頃で、日付が変わって2010年元日の0時10分頃に、原稿を確かに受け取った旨のお返事をいただいた。それが最後のやりとりだったように思う。

門脇氏の詰将棋界に対する貢献は非常に大きなものがあるが、その最たるものはやはり東洋文庫に収められた「詰むや詰まざるや」と「続・詰むや詰まざるや」を世に出されたことではないだろうか。江戸時代の将棋名人が将軍に献上したという詰将棋集の中で、最高傑作と呼ばれる三代伊藤宗看の「将棋無双」とその弟・看寿の「将棋図巧」。200局の詰将棋を一つずつ詳細に解説し、この二人の詰将棋が空前絶後のレベルに達していたことを広く世に知らしめた功績は計り知れない。詰将棋をただの終盤の練習問題としか認識していない将棋ファンにとっては、このような世界の存在は十分衝撃的である。「詰むや詰まざるや」を読んで詰将棋の魅力にとりつかれた詰将棋作家もかなりいるはずだ。

実のところ、私と詰将棋の関わりにおいても、「詰むや詰まざるや」は重要な存在である。私がこの本を手に入れたのは中学生のころだったと思う。書かれている手順を見ているとどんどん興味がわいてきて、載っている作品を一つ一つ盤に並べてみては感心していたものだ。棋力のない私にとっては一手一手の深い意味などよく分かっていなかったが、それでも敵の歩の前を馬が鋸状に動いたり、盤上に並べられた全部の駒が詰め上がったときにはほとんど消えてしまったりするのは、手順を追うだけで十分面白くてわくわくした。ずっと後になって詰将棋創作をふとしたきっかけで始めたとき、ビギナーのわりにそれなりの作品が創れたのも、中学時代に宗看・看寿を鑑賞した経験があったからかもしれない。その意味では、門脇氏の著作は私の詰将棋ライフの原点にあるといえるだろう。

ご冥福をお祈りしたい。

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先生の此処の欄のお陰で、アマゾンさんに、「 詰むや詰まざるや」
を注文出来ました。たった今届きましたので、今夜からの楽しみにしております。
有り難うございました。

それはよかったですね。私もこのエントリを書いたかいがありました。
あの本は詰将棋が分かる人にとっては素晴らしい価値があると思います。
是非盤に並べて楽しんでください。

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このページは、natsuoが2012年5月23日 22:23に書いたブログ記事です。

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