アラビアン・ナイトのチェスミステリー

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ここ数日、最近出版されたばかりの「アラビアン・ナイトのチェスミステリー」(Raymond Smullyan著、川辺治之訳、共立出版)をいつも手元に置いて、時間の合間合間に目を通して楽しんでいる。著者のスマリヤンは一昨年に97歳で死去した論理学者で、ピアノやマジックにも秀でた才能を持っていた人物。この本はチェスを題材にしているが、これからどう指せばよいかを考えるのではなく、現在の盤面から過去にどういう手が指されたかを推理し論証するという特殊な問題ばかりが集められている。このタイプの問題は逆向き解析 (Retrograde analysis) と呼ばれるが、チェスのルールを基盤にしてこれまでに指された手の可能性を絞っていくと、思いもよらないような結論を導き出せたりするのである。スマリヤンはチェスの逆向き解析問題集をもう1冊著しており、そちらは20年ほど前に邦訳が出ていた(残念ながら現在は絶版)。「アラビアン・ナイト」は知る人ぞ知る奇書であり、逆向き解析という特殊な世界のファンにとって、長い間翻訳が待ち望まれていた一冊である。

一読してまず思ったのは、問題が結構難しいということだ。簡単なものもときおり出てくるが、多くはかなり長い論証を必要とするものであり、一筋縄ではいかない。しかし問題を解かなくても、その問題にまつわるアラビアン・ナイトのエピソードを読んでいるだけで楽しくなる。チェスの逆向き解析の問題集というマニアックな題材を、アラビアン・ナイトの登場人物に語らせるというのは奇想天外なアイディアで、よく思いついたものと感心してしまう。奇才スマリヤンがいなければ、こんな本が世に出ることは決してなかっただろう。

さて、また1問、ちょっと考えてから寝ることにしよう。

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このページは、natsuoが2019年11月 7日 23:59に書いたブログ記事です。

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