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ここ数日、最近出版されたばかりの「アラビアン・ナイトのチェスミステリー」(Raymond Smullyan著、川辺治之訳、共立出版)をいつも手元に置いて、時間の合間合間に目を通して楽しんでいる。著者のスマリヤンは一昨年に97歳で死去した論理学者で、ピアノやマジックにも秀でた才能を持っていた人物。この本はチェスを題材にしているが、これからどう指せばよいかを考えるのではなく、現在の盤面から過去にどういう手が指されたかを推理し論証するという特殊な問題ばかりが集められている。このタイプの問題は逆向き解析 (Retrograde analysis) と呼ばれるが、チェスのルールを基盤にしてこれまでに指された手の可能性を絞っていくと、思いもよらないような結論を導き出せたりするのである。スマリヤンはチェスの逆向き解析問題集をもう1冊著しており、そちらは20年ほど前に邦訳が出ていた(残念ながら現在は絶版)。「アラビアン・ナイト」は知る人ぞ知る奇書であり、逆向き解析という特殊な世界のファンにとって、長い間翻訳が待ち望まれていた一冊である。

一読してまず思ったのは、問題が結構難しいということだ。簡単なものもときおり出てくるが、多くはかなり長い論証を必要とするものであり、一筋縄ではいかない。しかし問題を解かなくても、その問題にまつわるアラビアン・ナイトのエピソードを読んでいるだけで楽しくなる。チェスの逆向き解析の問題集というマニアックな題材を、アラビアン・ナイトの登場人物に語らせるというのは奇想天外なアイディアで、よく思いついたものと感心してしまう。奇才スマリヤンがいなければ、こんな本が世に出ることは決してなかっただろう。

さて、また1問、ちょっと考えてから寝ることにしよう。



1939年に創作された作品。フィニッシュはステイルメイトの成立に不要な駒が一つもなく、さらに白のKの回りに黒の駒が一つずつ利いているというideal stalemateの形になっている。329番も参照のこと。



ようやく、Kubbelのエンドゲームスタディ全440作をすべて掲載することができた。2007年6月14日に第1作を紹介してから、足かけ12年以上にわたって少しずつ更新を続けていた。見ている人ももうほとんどいないと思われるし、何だか最近は惰性で続けていると言われても仕方のない感じだったが、ここまでやったのだからとにかく走りきろうと思っていた。何とかゴールにたどり着くことができてホッとしている。



派手な応酬が見られる佳品。Kubbelの持ち味が出ている好作と思う。



いわゆるdraughts themeと呼ばれるテーマをきれいに表現した作品。このdraughtsとはチェッカーのことである。チェッカーでは、相手の駒をジャンプすることでその駒を取ることができるが、続けてジャンプができるときは1手で指せる。このことから、あとから白の一つの駒に次々と連続的に取られていくような配置に黒の駒を誘導するテーマを、チェッカーのテーマと呼ぶようになった。



底本では初手の黒の手から分かれる2つの変化が並置されていたが、ここでは棋譜再生の都合上、片方をメインラインとして扱っている。2つのメイトラインで、同じ詰み形がマス目の色が反対になって現れる趣向をカメレオン・エコーと呼ぶ。本作は初手で分岐する2つのメインラインにおいて、盤の反対側でカメレオン・エコーが出現するというのがテーマ。どちらのラインでも、Qを捨てたあとにNがメイトに向けてスイッチバックの動きをする。大技を実現するために少々無理作りをしている感もあるが、やりたいことをとにかく表現したということもできる。なお、だいぶ前の31番も参照のこと。





261番とも比較されたい。





Kubbelは本作を、ある程度駒が残っている中終盤タイプの作品としては自作中のベストだと考えていた。実際、技の切れ味は鮮やかで、並べていても爽快な気分になれる。271番429番も参照のこと。





チェックの連続でQで追い回して最後に捨てるという、詰将棋風の作品。6.Qh6+は龍捨ての味そのものだ。この手で、早く詰むにもかかわらず、逃げる手ではなく取る手をメインラインとしているところなどは、古典詰将棋のいわゆる「妙手優先ルール」を彷彿とさせる。初手にも同じQ捨てを見せており、盤の両端でQ捨てからのBによる単騎詰の筋が出てくるのを表現したかったのだろう。なお、このメイト形はTroitzkyの作品からアイディアを得ている。参考までに、Troitzkyの作品も掲げておく。






チェックの連続で駒を全部捨てる詰将棋風の構成。フィニッシュの局面では、白のKの周りのマスを押さえている黒駒はすべてマスごとに異なっており、黒のKだけがその役割を受け持たず傍観者になっている。



白だけでなく、黒の好手も楽しめる作品。Qを華麗に捨ててPで詰めるフィニッシュは、271番やこの後登場する433番でも見られる。



黒がステイルメイトに逃れる紛れ、詰将棋的な捨駒、ツークツワンクでのフィニッシュなど、見せ場にあふれている。難しくはないが、なかなかの佳品と思う。



底本では黒の6手目からの二つのラインが並置されていたが、ここでは棋譜再生の都合上、片方をメインラインとして扱っている。広く見える白のKの逃げ方が一つに限定されるのは面白い。



底本では初手に対する黒の二つの手が並置されていたが、ここでは棋譜再生の都合上、片方をメインラインとして扱っている。378番も参照のこと。



Kubbelは本作を1935年に創ったが発表はせずにいた。これを発展させて416番にしたのではないかと思われる。



1939年に創作された作品。Kubbel本人も指摘しているが、本作の詰め上がりは274番や、次の作品にも登場する。






1939年に創られた作品。底本では黒の2手目からの2つのライン、さらにそれぞれのラインにおける黒の4手目の変化が並置される形で書かれていたが、ここでは棋譜再生の都合上、ある一つのラインをメインラインとして扱っている。底本に解説はなかったが、コンピュータで解析すると、黒としては4...Bf6+としてお互いのQを盤上から消すのが最も紛れる手順のようである。



底本では黒の初手がA. 1...Qe4, B1. 1...Qd5, B2. 1...Qf5, C. 1...Qxe2と細かく分けられ、さらに2手目の変化もA1. 2...Kd5, A2. 2...Kf5と並置される形で書かれていたが、ここでは棋譜再生の都合上、ある一つのラインをメインラインとして扱っている。Bを捨てて背後からQで刺すというラインが5回登場する。



底本では黒の7手目からの2つの手順が並列に置かれていたが、ここでは棋譜再生の都合上、片方をメインラインとして扱っている。双方のQが残る作品でドローがゴールなのは、Kubbelとしては珍しい。



底本では5手目の黒の手からの2つのラインが並置されていたが、ここでは棋譜再生の都合上、片方をメインラインとして扱っている。取ってみろ、取ってみろとBをQの周りにうろつかせるところは、詰将棋の邪魔駒消去の雰囲気にも近いものを感じる。なお、本作で使われたアイディアは、本作発表の数年前に出たRinckによる作品をさらに発展させたものである。参考までに、Rinckの作品も掲げておく。







底本では黒の9手目の2つの変化が並置されていたが、ここでは棋譜再生の都合上、片方をメインラインとして扱っている。序盤のQの動きは、言わずと知れた馬鋸である。似たようなフィニッシュとして、41番396番も参照されたい。





Kubbelの両Q入り作品では珍しく、メイトではなくP昇格のフィニッシュになる。Pレースなど変化もそれなりに深く、読み応えがある。



このあとで登場する425番も参照のこと。



底本では2...Kd8と2...Kf8の変化が並べて置かれていたが、ここでは棋譜再生の都合上、片方をメインラインとして扱っている。最後のQ捨ては、手筋ものの詰将棋の龍捨てにそっくりだ。



アンパッサンがあるのは面白いが、白の手がきつすぎて黒の手にほとんど変化の余地がないのはちょっと興ざめな気もする。



底本では4手目の黒の応手のうち、4...Qg8(e8)と4...Qc8が並置されていたが、ここでは棋譜再生の都合上、片方をメインラインとして扱っている。



黒のKが上下運動を繰り返す間にNが盤上を動いていく様子は、馬鋸と少し似た雰囲気を持っている。フィニッシュのQの上下運動も合わせ、久留島喜内の詰将棋作品のような趣を感じる一品。



黒のQがいくつかの違ったラインで素抜きのトラップにかかるという趣向。またそれとは別に、黒に味方の駒で自らの退路を2カ所においてブロックさせ、盤の中央でモデルメイトにするというきれいな変化も出てくる。初期の作品で変化の底は浅いが、やさしい手筋もの特有の気持ちよさは出ていると思う。



7段目でQ交換を強要し、Qを取ったPで勝負を決める。378番も参照のこと。



それほど奥が深くはないが、Pの3連続ステップに黒側からのステイルメイト狙いの味付けもあって楽しめる。



389番と似ているが、こちらでは幕が上がったときにまだ黒のQが対角線のラインにいない。しかし、作品の底としてはまだ浅いように思う。



ディスカヴァード・アタックのテーマが4回。盤面右側で2回、次いで線対称の位置に移動してもう2回繰り返される。



Qによるチェックの連続で迫りつつ、局面を少しずつ変化させていく。長編詰将棋における龍追いの感覚に非常に近く、Kubbel作品の詰将棋との親和性を強く感じさせる一品といえるだろう。







PのチェックでQのラインを開き、黒のQを落とす。その構図がまず斜めのラインで構成され、それが外れて今度は横のラインで組み直される。389番を発展させた作品。



1940年に創られた作品。394番も参照のこと。



底本では黒の4手目からの2つのラインが並置されていたが、ここでは棋譜再生の都合上、片方をメインラインとして扱っている。詰将棋風の手順から最後は2種類のアンダープロモーションが現れる。1937年に創られた作品。



底本では4手目の黒の5通りの応手が並置されていたが、ここでは棋譜再生の都合上、そのうちの一つをメインラインとして扱っている。



底本では初手に対する黒の応手、1...Qb8と1...Qd8が等価な変化として並べられていたが、ここでは棋譜再生の都合上、片方をメインラインとして扱っている。4つの変化で串刺しが現れるという趣向。



序の追い回しがあったあと、Qをb8からb3へと大きく上下に振り、次いでb7, b4と少し振り幅を小さくしてもう一往復する。Bの捨駒や終盤に入るKの前進など、味付けも利いている。



底本では、白の2手目に対する黒の3つの応手2...Kc5, 2...Qe5, 2...Ke5が並列に置かれる形で書かれていたが、ここでは棋譜再生の都合上、そのうちの一つをメインラインとして扱っている。395番とも比較されたい。



1939年に創られた作品。だいぶ前の41番や、このあと出てくる419番とも比較されたい。



長編詰将棋で見かける龍追いの趣き。黒のQを串刺しで召し捕る。最初に4段目の横のライン、続いて斜めのラインで3つ出てくる。このあと出てくる397番と比較されたい。



1940年に創作された作品。Kubbelは、下に掲げたような少し別の配置から始めれば、もう1手手数を延ばせると記している。しかし彼は上の配置を選んだ。チェックではない手で始まること、2.Qc2が下の代案の3.Be7という手より発見しがたい手であること、黒のQが作意手順で動いていることなどが理由である。

なお、Kubbelは当初、本作を一段下にずらした配置で考えていた。しかし彼は、その配置では1.Qc5+ Ke5 2.Be6+ Kxe6 3.Qc8+という別解があることに気づき、この余詰を消すために全体を一段上に上げたのである。しかし、一方でKubbelはこの別解を非常に面白く思い、このラインが4通りの変化で現れるという作品を別に創った。このあと登場する402番を参照のこと。






いわゆるdraughts themeと呼ばれるテーマの作品。白は2つのQを犠牲にして黒のQやKを強制的に移動させ、最後にNで連続的に次々とQを取っていく。"draughts" はいわゆるチェッカーのことである。



発表されたのは死後だが、創作されたのは1937年。黒のQへのディスカヴァードアタックが、3つの変化それぞれで現れる。黒の手に応じて、d1-h5の斜めのライン、4段目、3段目のそれぞれのラインでアタックが生じる仕掛けになっている。

2019年11月

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