先日、「鳩のなかの猫」(アガサ・クリスティー、橋本福夫訳)を読んでいたら、こんな一節に出くわした:
「~のところへ、今朝身代金要求の手紙が来たそうです。新型のコロナでタイプしてあり、消印はポーツマス。~」
4年前に読んでいたら、何も思わずに通り過ぎていただろう。だが今は「新型のコロナ」というフレーズにおやっと思ってしまう。もちろんここではタイプライターのことだが、それがまず頭に思い浮かぶ人はもう今はほとんどいないだろう。この翻訳が世に出たときから四十数年経つが、今後に新訳が出たらここは違う言い回しが当てられそうである。