アクロイド殺し

先日、実家から送られてきたものの中に本が数冊入っており、その中の一つに「アクロイド殺し」(ハヤカワ文庫)があった。言わずと知れたミステリの名作である。もうだいぶ前、おそらく十代のころにこれは読んでいたが、そのときはおそらく創元推理文庫で、邦題も「アクロイド殺害事件」だったように記憶している。久しぶりになつかしく読み返してみた。犯人が分かっている状態で読むのも刑事コロンボシリーズを見ているようなもので、案外引き込まれるものだ。

ただ、裏表紙に書かれた本作のあらすじがちょっと気になった。次のように書かれている:

深夜の電話に駆けつけたシェパード医師が見たのは、村の名士アクロイド氏の変わり果てた姿。容疑者である氏の甥が行方をくらませ、事件は早くも迷宮入りの様相を呈し始めた。だが、村に越してきた変人が名探偵ポアロと判明し、局面は新たな展開を……驚愕の真相でミステリ界に大きな波紋を投じた名作が新訳で登場。

「容疑者である氏の甥が行方をくらませ」とあるのだが、作中で失踪するのはアクロイド氏が結婚した相手の連れ子であり、つまり氏の義理の息子である。さすがにこれは単純な間違いだと思うのだが、わずか数行のあらすじでこんな基本的な人間関係を取り違えるというのもちょっと意外な気がする。まあ本作のトリックとはそれほど関係がないから、あまり気を遣わずにいてうっかりしたのだろう。

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